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妖精と王子様のへんてこワルツ  作者: 魚野れん
夜会には王子様と妖精さんを添え……たかった

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 山岳訓練から半年。ロスヴィータの右足は完治し、エルフリートの不調も元通り。訓練を重ね、ようやくお披露目の日がやってきた。

 少し前には山岳訓練をリベンジし、通常の訓練を積み重ねてきてチームワークも上々である。マロリーは生活魔法を何とか使えるようになった。バルティルデは大ざっぱな動きが多くなりがちという弱点を埋めるべく武器サイズの見直しをしたし、ロスヴィータは魔法が使える後衛がいる時、そしてエルフリートが前衛と後衛を兼ねる時の連携について分析をしていた。

 相変わらずエルフリートはロスヴィータを王子様のように扱ったし、ロスヴィータはロスヴィータでエルフリートの事を妖精さんと呼んで可愛がった。そうしている内に、騎士団の名物コンビとまで言われるようになっていた。


 とは言え、これらは騎士団の中での事である。対外的なお披露目は、これから始まるパレードであった。パレードと叙任式が終われば、貴族向けのお披露目会として夜会が開かれる事になっている。

 日差しも暖かくなり、今日は晴天で気持ちの良い風が吹いている。晴れ姿を見せるにはぴったりの日だった。ロスヴィータを始めパレードの主役となる女性騎士団員は、式典用の正装で着飾っている。

 普段とは違って、全身真っ白。装飾物は全てゴールドで、騎士団の青いマントと対になるように赤いマントをつけている。このパレードのすぐ後、正式に騎士団として叙任されるから肩章はない。

 帯剣しているけど、使ったら折れそうな式典用の剣は装飾がすごい。きらきらと宝飾が輝くから、馬上の私たちは相当かっこよく見えると思う。


 特にロスヴィータなんて、本物の王子様以上に王子様だもん。

 煌びやかな金糸をなびかせて目の前を進む彼女は、堂々としていて見ほれてしまう。街の人に混ざって彼女の勇姿を見守りたい。そうしてこの目に焼き付ける事ができたらなんて幸せな事か!

 エルフリートは長い髪をシニョン風にまとめ上げている。普段は自分で三つ編みや編み込みで済ませてしまうけど、今日はレオンハルトの侍女を借りて綺麗にしてもらった。化粧もちょっと気合いが入ってる。今のところ誰にも気がつかれていないけど、これだけの人目があったら分からないもんね。

 可能な限り可愛らしい妖精さんに近づけるように頑張ってもらった。


 バルティルデやマロリーもそれぞれ普段よりもお洒落になっている。バルティルデなんて、少し前まで傭兵だったようには見えないね。きりっとした貴族の麗人に見える。

 マロリーはちょっと幼く見えるから、礼服と対照的になってるね。でも、そのミスマッチさが魔法騎士らしさを強調してる。二人ともすてき。

 あちこちの声援に手を振って、笑顔を振りまいて応えていると、あっという間に王宮へと辿り着いてしまった。事前に練習したけど、これから叙任式だ。緊張するなぁ。


 声援を背に門をくぐった所で馬から降りた。ここからは徒歩。城内に入るからね。謁見の間に辿り着けば陛下を始め宰相や大臣、騎士団長などが並び立っている。何だか空気が重い。

 ロスヴィータが叙任され、私の番になる。ロスヴィータと同じ艶やかな金の髪が目立つ陛下は、彼女が確かに国王の血筋であると証明している。優しげにも見える涼やかな瞳は、なるほど賢王らしい理性を思わせる。陛下もかっこいい。


「我が遠縁を支えてくれてありがとう」

 肩章をつける際、ぽそりと告げられる。

「いえ、私がしたいだけですから」

 微笑みながら返せば、満足したように頷かれる。

「では、励め」

「はっ」


 帯刀していた剣を掲げ、深く礼をした。その剣を両肩に触れさせてから返される。これで叙任式は終わり。謁見の間を出ると、一気に気が抜けた。はあ、なんかあそこすごく空気が重かったぁ……。

 最初は緊張のせいかと思ったけど、たぶん違う。扉一つでこんなに違うなんてありえないと思う。うう、気になる。気になるけど、きっと私には解決できない問題だよね。だって、王宮の秘密だろうし。

 そんな事を考えている内に自室へ戻ってきてしまった。今日は大忙しで、ゆっくりしている暇なんてない。


 エルフリートにとっては、これからが本番みたいなもの。エルフリートは夜会に向けてドレスアップするのである。ロスヴィータは男装だという。彼女がより男らしくなるのであれば、エルフリートはより女性らしくしなければならないだろう。

 肌を見せるドレスは難しい。似合わなくはないだろうが、“エルフリーデ”の雰囲気には合わない。そして何よりも女性らしくするにはふりふりのふわふわにする方が効果がある。という事で、今回はふんわりとした可愛らしさをアピールするドレスを用意した。

 メインはカラーは白。ただ白だけだと堅苦しくなりがちになる。対策としてスカート部分へ桃色の薄手の生地を重ね、細やかで淡い色合いの刺繍を散らした。スタンドカラーで喉仏を隠し、念の為にパフスリーブで肩幅をごまかす。


 これだけだと古典的なスタイルになるけど、そこは生地を重ねたりフリルやレースを使う事で新しいスタイルへとブラッシュアップした。かなりボリュームのあるドレスだから、動きにくいんだけど……もう諦めるしかないよね。

 女装バレと転倒だけは気をつけないと。エルフリートは高いのか低いのかわからない決意を胸に秘めながら、侍女に身を任せるのだった。

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