Scene1
学校は徒歩でおよそ十五分のところにある。門には『私立宮内高等学校』と記され、オレと同じ制服をきた生徒達が高層ビルのような校舎へ流れていく。もちろんオレもこの流れに乗った。
玄関は二階までの吹き抜けで、広々としている。生徒達はこのロビーから改札を通過する。改札口の隅では縦縞セーターにロングスカート姿の女性が、周囲を見回している。オレはその女性に近づき、声をかけた。
「初めまして、野原暁です」
女性は小振りな胸に手をあて、
「初めまして、あなたの担任になる遠野薫<とおの かおる>です。理事長から話は伺ってます。まずは理事長に挨拶しましょう」
遠野はオレに通行証を渡し、先陣を切った。そのとき靴先を床の小さな溝にぶつけ、派手に転んだ。帆のように広がったスカートの中では、シルク地のボクサーパンツが輝いていた。オレは遠野に駆け寄り、スカートを元に戻した。
「大丈夫ですか?」
遠野は笑顔を浮かべ、立ち上がった。
その後、オレ達は何事もなかったように上りエスカレーターに乗った。エスカレーターを降りる間、彼女のスカートが空調で揺れていた。
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