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Scene2

 オレは彩早に勉強会の場所を確認した後、遠野と合流し生徒指導室へ向かった。生徒指導室には黒皮のソファとアクリルテーブルがあった。それが生徒指導向けなのかはともかくとし、遠野はソファに飛び込むように腰を降ろし、肘掛けに体を預けた。


 長い髪が柳のように垂れ、胸元にかかる。その一瞬には思わず目を奪われた。だが、こうした下品な視線はすぐに気づかれることをマザーに教わっていたオレは、慌てて視線を遠野の顔に戻した。遠野は待ちかまえていたように、オレと視線が合ったタイミングで微笑んだ。


 遠野は肘掛けにもたれたまま、語りかけた。


「暁くんの魔力測定試験の結果、聞きました。魔力属性が変化して負傷したらしいですね 変な現象に遭遇しましたね」


「やっぱり珍しい現象なのか?」


 オレが尋ねると、遠野は間を置いて返答した。


「そうですね。私は初めて聞きました。心あたりはあるのですが、環境を変えて確認する必要があります。」

「なるほど、橘正也は試験のミスで発生した現象だって言ってたな」


 オレがそういうと、遠野は体を起こした。


「橘くんと話したんですか?」


「食堂で会ったんだ。憩依と一触即発だった」


 そしてオレは食堂で起こった出来事を報告した。食堂でオレの魔力測定の結果について話していたときに、橘正也が現れて憩依と揉めた。そして二人は次の魔術実習で勝負をすることになった。このことを伝えると、遠野はしまったと言わんばかりに額を押さえた。そして遠野は橘正也のこれまでの経緯を教えてくれた。


 橘くんは、この地域の有力者の次男です。彼のお兄さんは本校で優秀な成績を納め、卒業後も魔術の分野で活躍しています。だから弟である橘くんも入学時は注目されました。だけど入学後の彼の成績はイマイチで、彼の兄を知る人達から『橘のダメな方』と呼ばれていました。彼は周りの生徒・大人に失望され、悩んだことでしょう。


 宮内さんのチームに加入したのはその頃です。当時、宮内さんも親の七光りと呼ばれ、クラス内で陰湿な虐めを受けていました。それを見かねた橘くんは、宮内さんのチームに加入し、自分の父親や兄の地位を強調して、虐めを止めました。橘くんは魔術に真剣で、宮内さんとは気が合いました。また、彼はまとめ役の才があり、魔術開発技術を持つ砂川和毅・治癒の才能がある若葉彩早をチームに招きました。そして彼自身も宮内さんとともに成績を上げていきました。


 やがて宮内さんのチームに入りたいという女子生徒達が現れました。彼女達は自分が所属したチームを抜けてまで、真面目に魔術を学ぶつもりでチームに加入しました。


 だけど、彼女達の技術や成績はあまり芳しくありませんでした。そんな彼女達に宮内さんは高度な要求をして、彼女達の心を折ってしまいました。チームを抜けた彼女達は居場所を失いました。そんな彼女達を見た橘くんは、チームを抜け、彼女達とチームを組むことにしました。


 遠野は口を閉じ、オレに錠剤の入ったタブレットを差し出した。そしてオレがタブレットを受け取ると、遠野はソファから立ち上がった。


「ご報告ありがとうございます。引き続き宮内さんの護衛をお願いします。校内多少離れても大丈夫です。私も宮内さんを見張っていますし、若葉さんや砂川くんもいます。ですが、校外では彼女の側にいるようにしてください」


「承知しました」


 オレは生徒指導室を退室した。憩依達の勉強会が行われる図書館は別館で設立されている。だからオレは校舎を出て、閑散とした図書館への道を進んだ。外は日が沈み、空気を吸い込むと喉と肺が冷たくなった。


 そのとき、背後から微かに迫る足音に気づいた。振り向くと、オレの頬に衝撃と鈍痛が走った。オレはその衝撃を受け流すように飛び退き、衝撃の正体を探った。それは大柄な男子生徒の拳だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話のテンポが良く、読み進める事に苦を感じません。 [気になる点] 地の文で説明する場合、一人称視点だと一見意味が分かりません。 こちらは会話文にするか、三人称視点に変えた方が伝わりやすい…
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