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暁の朝~10年後の帰郷と再会を求めて~  作者: 月丘ちひろ
6話:ファミレス席とかつての仲間
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Scene2

 赤髪の生徒はだらりと席を達あがり、彩早の隣のわずかなスペースに腰を卸した。そして、座りにくいとわかると、彼は彩早の肩に手を回し、彩早にピッタリとくっつき、オレの方をみた。


「野原暁だっけ? 初めまして。オレは橘正也(たちばなまさなり)だ。お前が試験するところ、後ろから見たよ。転校初日なのに酷い事故に巻き込まれたな」


「事故? どういことだ?」


 オレがたずねると、正也は答えた。


「適正試験をするときには試験環境をリセットするんだ。そうしないと、稀に前試験者の魔力が干渉することがある。暁の場合も前試験者の魔力に干渉されたんじゃないか。和毅は環境準備は早いけど、せっかちでケアレスミスが多いよな。彩早は世話を焼きたがり過ぎて、周りが見えなくなるよな。そして憩依、お前は自分勝手過ぎてそもそも後の人のことを考えないだろ。お前等、試験環境のリセットをちゃんとしたのか?」


 正也の言葉に和毅も、彩早も沈黙した。憩依も何かを言おうとしたが、言葉に詰まっている様子だった。そんな憩依達の反応にため息を漏らした。そして正也は興味をなくしたように彩早から離れ、オレの方を向いた。


「そういうわけだ。お前を受け入れたチームはポンコツ揃いなんだ。悪いことは言わないから、こいつらと付き合うのはやめて、オレのチームにでもこいよ。憩依みたいな親の七光りがいるチームにいたら、自分の身を滅ぼすぞ」


 正也がそう言ったとき、オレの隣席から冷気を感じた。振り向くと憩依が怒りをむき出しに、青白く輝く指輪を正也に翳した。この行動に和毅と彩早もぎょっとして、憩依をなだめようとした。だが、和毅と彩早が行動を起こすよりも、憩依の方が早かった。憩依は指輪の冷気で精製した氷の槍を正也に放った。氷の槍は正也の脇を抜けて壁に刺さった。


 正也は頭を掻き、


「こんなところで魔術を使うなよ。危ないだろ」


 憩依は声を震わせて言った。


「許せない。あんたに七光りと言われたくない」


 そのとき、正也の眉間がピクリと痙攣した。


「勝負は受ける。ただし、次の魔術研修でだ」


「わかった、魔術研修ね……約束したからね?」


 憩依は鼻息を荒げながらも、指輪を構えるのをやめた。正也は場が収まったことを確認し、オレ達に背を向けて歩き出した。オレはそんな正也の後ろ姿をじっと見ていた。


 橘正也、それはオレの幼なじみを虐めていた、クラスメイトの弟の名前だった。

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