4.5.能力の使い方
今回は会話が多く、読み飛ばしてもらっても大丈夫な回で短めです。
屋上で義人、水谷、小倉の三人組は義人が勝った時の話を座りながら話していた。
「よく俺ら二人を倒したなぁ、お前どんな方法を使ったんだ?」
小倉は義人を不思議そうに見つめる。水谷も興味があるようで義人の顔をずっと見ている。
「水谷が口に水を含んで水鉄砲をして、小倉がコインの地雷設置? をしていたから、あぁ……小倉に急接近して倒して、威圧かけて諦めさせた? 感じかなぁ」
正直に蹴り飛ばしたとは言わずに言葉を濁して説明をする。
すると話を聞いた二人は不満そうな顔を浮かべ、
「地雷設置? 十円持って相手の顔面の前で爆発させた方が早いだろ」
「水を飛ばすのは悪手だね。僕なら水をナイフみたいに振り回すよ」
と最善の行動があるはずだと文句を言う。
俺だったらこうする、いや僕ならこうする、と言い合い始めたのを見た義人は二人が普段から戦う時の妄想をしているんだろうなぁと感じた。こんな能力を持っていたらこうする、が実際にできることで、色々試すことができた二人は実戦経験はないものの戦闘時の手段は義人よりも豊富であることは間違いなかった。
「義人、それは最初に話し合いをして、ダメだったら相手をぶちのめすって流れだったんだよな?」
「あぁ、そうだな」
「俺だったらまずこいつに水を隠し持ってもらって、断った瞬間に喉元を撃たせる、ダメだったら俺が百円玉をぶん投げる」
「いや僕なら屋上のドアノブに百円玉を貼り付けておいて、断って帰す時に爆発してもらうよ」
目の前で自分を殺す方法を議題に話し合わされ、義人は複雑な気持ちになる。
「ごめんね。僕たちいつもこういう戦ったらどうするのか! みたいなこと考えてて」
それが顔に出ていたのか、水谷は気を使ってくれた。
「あーでも、初めての戦闘は記憶が無いのかぁ。くっそ、余計洗脳させてきた奴に腹が立ってきたぜ」
小倉は悔しそうに胡座で座っている膝を拳で叩いた。
「でもさ、二人がそこまで言うなら、洗脳した奴も操り慣れてなくて戦闘慣れしてないのかもしれないな」
「戦闘慣れっつーか、能力の勝手が分からねぇんじゃねぇか?」
「そうか! 僕たちの考えを元に操らないで、ラジコンを動かすみたいに操っていたとしたら、僕たちが最善の行動を取らないのにも納得がいくよ!」
水谷は一つの答えに辿り着いたようだ。
「洗脳なら自動で動いてもらうけど、ラジコン操作なら手動で動かさなきゃいけないでしょ?」
続いて義人も納得する。
「俺たちは屋上で戦っていて……それを近くで見ている奴がいたのか……?」
「昨日ここに隠れていた奴がいたって訳か?」
「分からないよ、僕たちを双眼鏡なんかで見ていたのかも」
義人はふと屋上の扉を見る。そして昨日のことを振り返った時、
「あの屋上の扉……半開きだった……!」
水谷と小倉はばっと扉を見るために振り返った。
「……閉まってんぞ」
「違う、昨日帰る時は開いていたんだ」
「昨日は全く気にしていなかったから分からなかったけど、確かに開いていたんだ」
「……ラジコン野郎で間違いなくなった訳だな」
三人は閉じた屋上の鉄扉を黙って見つめていた。