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7.1 調理日の記録

 こちら(付録)はリアルでつけている研究日記のバケツプリンに関連した日の記述です。ただし、身バレや特定を防ぐため、例によって例のごとく、人名や固有名詞を拙作【魔系学生の日記】のキャラクターおよび世界観で機械的に置き換えています。


 魔系学生の日記を呼んだことのある方ならすごく見憶えがあるかもしれませんが、つまりそういうことです。そして、そういうわけでもないのにすごく見憶えや心当たりがあるかたは、どうかそのままそっと心の中に閉まっていつも通りの何気ない日常を過ごしてください。正直めちゃくちゃヒヤヒヤしております。

 とうとうこの日がやってきた。長年の夢を叶う瞬間が今から楽しみでならない。


 研究室に到着したのはいつもと同じくらい。今日は祝祭日の振替休日が普通の平日に割り振られているという奇跡的な日。これがどういう意味なのかは、これを読んでいるであろう魔系学生ならわかることだろう。


 到着後はさっそくバケツプリンの製作を試みる。まずはネットで最後の確認をし、調理道具やその他をきちんと準備した。ついでにアンシスでバケツプリンの解析モデルまで用意しておくという徹底っぷり。まったく、自分で自分が怖い。


 ラフォイドルが来たくらいの時間に調理開始。朝に──で買ってきた牛乳(合計4000mlで766円)を冷蔵庫から取り出し、様子見と言うことで800mlを鍋に投入。これを中火で加熱しながら、プリンエル二袋を投入した。


 粉末プリンというのもなかなか侮れないもので、その黄色みかかった粉が鍋にぶちまけられた瞬間、甘いいい香りが鼻を衝く。いかにもお菓子って感じの、雪がしんしんと降る中で暖炉にあたりながら食べると良さげな感じの匂い。お菓子と言えば冬のイメージがあるのはなぜだろうか。


 で、これをかき混ぜながらゆっくり温めていく。いくらか熱せられたところでわずかばかりのとろみがつくことを確認。見た目は先ほどと同じくクリーム色みたいなかんじで変化はなかったけれど、手応えは確かに違っていた。あ、なんか表面に膜も出来ていたけれど、これは牛乳全般に言えることか?


 温まるにつ入れてプリンの甘い匂いもかなり強くなってくる。途中でやってきた院生はその甘い匂いにかなり驚いていた。


 沸騰したところで弱火に変え、そこからさらに一分ほど煮詰める。これで作業そのものは終了。ラフォイドルと協力してプリン液をバケツに投入。吹きこぼれることもなく、第一陣は無事に終了したと言えるだろう。


 そんなわけで第二陣の開始。今度は牛乳1200mlとプリンエル三袋を投入した。これでぴったり半分を使い切ったことになる。


 ゆっくりゆっくりかき混ぜていたのはいいんだけれど、どうにもこうにもじれったい。かき混ぜているしどうせさして変わらぬと火をちょっと強くした。特に何事もなく、第二陣もそのままバケツの中にぶち込んでいく。だいぶ鍋が汚れてきたけれど、無視してそのまま作業を続行。


 そしてとうとう折り返し地点。第三陣のはじまり。ラフォイドルがプリンエルのパッケージを全部開けてくれていたため作業が大変捗る。今回は牛乳1000mlにプリンエル二袋を投入。比率がちょっとおかしいけれど、どうせ後で混ぜるから問題ないだろうと思った次第である。


 ゆっくりゆっくり温めながら鍋をかき混ぜていたところ、ティルトゥとトゥルトゥから研究について相談を持ち掛けられる。手が離せなかったのでかき混ぜる作業をポポルにお願いした。なんだかんだ言いながらもあいつは結構ノリノリでかき混ぜてくれていた。ありがとうございます。


 で、ぼちぼちいろいろとティルトゥたちと相談する。内容はやはり表面形状パラメータの処理について。もうどうしようもないのでキート先生が来たらみんなで相談してどうにかしようってことになった。


 相談している最中、ヨキが院生室にやってきた。まさか先生を前にして鍋をかき混ぜ続けるわけにもいかず、ポポルは直立不動の体勢を貫く。ヨキは『おう、院生たちはもう来とるのか?』と人数確認をした直後、実は今日は休日だということを知らされて『じゃあ、今日は早いところ帰りますわ』って言って部屋を出ていった。いったいなんだったのだろうか。


 さて、いろいろ諸々片付いたところでふたたびプリンづくりを続ける。ほんのちょっと底のほうが焦げ付いたというか、プリン液が固形化して鍋の底や表面にこびりついていたけれど特に問題なし。第三陣もバケツの中にざばっと投入。この段階で迫力が半端ない。


 あ、このとき件のこびりついて固形化したプリン(?)が溶液中に交じっていたため、ラフォイドルに濾器にもなる篩を持ってもらい、それを介して溶液をバケツに投入した。二人の華麗なる協力プレイと言えるだろう。なんだかんだでちゃんと手伝ってくれるあたり、ラフォイドルも優しいと思う。


 そしてとうとうラストの第四陣。残った牛乳1000mlとプリンエル三袋を投入して加熱していく。このくらいになるともう慣れたもので、作業もだいぶおざなりになっていた。ぶっちゃけ焦げないようにかき混ぜるだけだし。


 加熱の途中、並行してカラメルソース作りも行う。フィルラドにかき混ぜる作業を変わってもらい、プリンエルに付属していた粉末状のカラメルをボウルにぶちまけた。粉末コーラみたいな色……で通じるかわからないけれど、ともかくそんな色をした粉は妙に甘ったるい香りを発していてなんか違和感がすごい。


 で、そいつを予め沸かして冷ましておいたぬるま湯で解いていく。甘い匂いがより一層強くなり、粉だったそれは黒味の強い焦げ茶色の液体となった。ここでもまた、俺が湯を大さじで測り、ラフォイドルがカラメル粉末をボウルにあけて……と、まるで餅つきのようなコンビネーションを発揮する。水、カラメル、水、カラメル……とかなりリズミカル。


 はっきり言おう。カラメルづくりの時のラフォイドルはめちゃくちゃノリノリだった。


 カラメル粉末十袋に水を大さじ十杯加えたところでカラメルソースの完成。強い甘い匂いはするけれど、グラニュー糖から作るカラメルソースのそれとは全然違う。試しにちょっとぺろりと舐めたところ、カラメルってよりかはむしろ黒蜜のそれに近い甘さと風味であった。


 さて、そんなこんなをしている間にプリン液のほうも煮詰まった。ほんの少し熱が取れたところで最後のひと工夫として余っていたゼラチン10gを投入する。これでより強固になって自重崩壊を防いでくれればいい……と思ったんだけど、一度に入れ過ぎたのか、はたまた元からある凝固剤おそらくゼラチンによって飽和限界を迎えていたためか、全然溶けずに塊になってしまった。


 ともあれ、完成したそれを再びラフォイドルと協力してバケツに流し込む。予想通り、溢れ出ない程度に、ほどほどのいい塩梅にプリン液はバケツ内に収まった。すごくいい感じのぴったり具合に思わず頬が緩む。


 バケツに全部収まったところで全体をおたまでぐるぐるかき混ぜる。濃度のムラがあるはずだから、なるべくそれを残さないようにかなり念入りに混ぜた。しっかりかきまぜたところで見た目を損なう表面の泡を取り除き、熱いうちに先程作ったカラメルソースを中心部からゆっくりと流し込んでいく。


 本当なら食べる直前にかけるらしいんだけど、こうすることで普通のプリンと同じように底部にカラメルを敷くことができる。カラメルのほうがプリン液より重いから、上手い具合に沈殿するって寸法だ。


 なんだかんだで昼前には作業終了。あとは粗熱を取って冷蔵庫で一晩冷やすだけ。部屋中……下手したら階段の前あたりまで甘い匂いでいっぱいになっていたかもしれない。でもあの匂い、実は結構好きだったりする。あんまそういうの気にならないタイプなんだよね。


 今回は初めてということもあり、吹きこぼれるのを警戒して四回に分けてプリン液を作ったわけだけど、鍋容量的には問題ないから、十分に警戒するという前提があるなら一度に牛乳2000ml、プリンエル五袋使って二回に分けて作ったほうがいいかもしれない。ただ、その場合鍋がすごく重くなるだろうから、バケツに流し込む時は十分に注意する事。


 プリン製作後の午後、クーラスがおみやげのタコせんべいをくれた。また、ゼクトからは──のお土産としてチョコレートを貰った。本当にありがとうございます。


 午後は例の進路希望調査票を記入する。去年の暮れに下書きを済ませておいたため、らくちんと言えばらくちん。どうせ本来なら今日は休みの日だし、思いっきりグダグダしながら記入した。


 さて、そんなふうに過ごしていたところ、なぜかポポル、ラフォイドル、キイラムさんとジェンガをすることになった。微妙に前回とルールが違ったものの、みんなでノリノリでゲームを進めていく。


 さすがは魔系学生、それも触媒反応研究室と言うべきか、どうしてなかなか白熱する。ゲーム開始後の高さの1.5倍程度になってもまだ続いているし、全荷重を一本で支えているところもしばしば。『これもう絶対無理だろ!』ってみんなの意見が一致したというのに、その後さらに二周も続いてしまった。


 最終的に俺が負けてしまう。あの時ポポルが逆のほうに木をおいてくれていればまだ勝機はあった……というか、俺が一巡前に逆方向に木を置いてバランスを致命的にしておけばキイラムさんのターンで終わったというのに。やはり俺はまだまだ詰めが甘いようだ。


 なお、この様子を見ていたノエルノさんとクーラスは『まるでルマルマ幼稚園だな』、『去年もこんなことあったような』……みたいなことを言っていた。どうやら一月のM1は毎年こんな感じらしい。去年は学部生もなんだかんだ結構遊んでいた気がするけれど。


 すごくどうでもいいけれど、おやつの時間ごろ、ポポルが唐突に自分語りを始めだした。いきなり『俺意識高いんだよね』から始まり、『これから毎朝スムージーを飲もうと思っている』と続ける。意識が高すぎて置いてけぼりにされた気分。


 聞けば、ポポルの実家では毎日グリーンスムージーが出るらしい。ほうれんそうとバナナを使ったやつっていっていた気がする。これを飲まないと朝食を食べさせてもらえないとかなんとか。実に健康的な家庭のようだ。


 長くなったがこんなものだろう。帰り際にラフォイドルに麻雀の勝負を挑まれたけれど、コンピューターが勝ってしまい微妙な空気になったのを覚えている。書いてて思ったけど、本当にクソどうでもいいことだった。


 あ、最後に一つだけ。


 今日のプリンづくりの工程、およびジェンガを楽しむラフォイドルは写真に収めてあるので、気にならなくてもふぉとらいぶらりを参照しておくこと。やっぱり実物を見るのが一番だからね!

20180105 前書き追加

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