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破滅の魔導王とゴーレムの蛮妃  作者: 北下路 来名
第6章 襲撃の冒険者
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第74話 長剣と鼠の男


 

「それにしても、何というか……。やっちまったなぁ、これ」


 軽く頭を抱えつつ、木漏れ日のロマンチック恋人空間を見渡した。

 苔むした地面には、落ち武者のような様相の男達が、惨憺たる有り様で横たわっている。

 彼らは執拗な暴行を受け、顔面も原形をとどめないほどに滅茶苦茶だ。高そうな装備も、そのほとんどが破壊されて周囲に散乱している。

 全員もはや虫の息である。

 まるっきり台風でも吹き荒れた後みたいな光景だ。


 ……すまん。つい自然災害のような感じで言ってしまった。

 もちろん犯人は全てうちのゴレである。


 足元に、折れた長剣が一本転がっている。

 柄を持って拾い上げた。

「うわ、重いな……」

 刀身が半ほどで折れてしまっているから、本来の重量の半分もないはずだ。しかし、それでもずっしりとした重みを感じる。

 紛れもない、人殺し用の武器だ。

 凝った装飾を見れば、素人目にも値の張りそうな品だと分かる。

 この剣の持ち主である男達は、最初の遭遇時点でいきなり抜剣してきた。明らかにまともな人間ではないと思う。

 こんなことを言うと、実に平和ボケした日本人らしい意見――と思われるかもしれない。


 だが、実は全くそうではない。


 この世界では、帯剣している人間自体はそこそこ見かけるが、実際に気軽に剣を抜いている者など見たことがないのだ。

 俺が交渉に先立つ〈土の戦斧〉の生成に消極的だった理由も、その発想の根底にあったのは、まさにこの事実だ。


 ――おそらくこの世界において、刀剣を鞘から抜く行為が持つ意味は重い。


 召喚以降、俺が抜剣した人間を見た経験というもの自体、おそらく、ティバラの街で借金取りのチンピラとトラブった時くらいじゃないか?

 だが、あの時ですら、先に手を出したのはゴレの方だった。

 あのチンピラどもは確かにどうしようもない連中だったが、そんな奴らにすら、自己防衛や仲間の報復といった、剣を抜くに相応の理由はあったのだ。

 もし抜剣に関する慣習上の制約がこの世界に存在していないならば、あのチンピラ達は、ハゲを恫喝する際にも、俺を威圧する際にも、剣を抜いて刃をチラつかせていたはずなんだ。実際、その機会は何度もあった。

 しかし、奴らは結局、剣を脅しに使わなかった。

 実際に剣を抜いたのは、俺との戦いに発展する直前だ。


 この世界における抜剣行為は、少なくとも、相手に同様に武器を抜かせる覚悟がある以上の事は意味しているはずだ。

 殺す気も殺される気もないのに、ホイホイ刃を見せびらかして、己の力を半端に誇示する――おそらくここは、そういう事が許される社会じゃない。

 武器が身近だからこそ、あるいは線引きをしっかりしているのかもしれない。

 両者が抜けば、始まるのは殺し合いなのだから。

 ガキのチャンバラではないのだ。


「しかし、だとすると、ここに転がってる連中は一体何者だったんだ……?」


 剣を抜いての殺し合いに躊躇がなく、さらにはゴーレムの里の事情を知った上で、なおも少人数で襲撃をかけようとしていたとおぼしき、謎の武装集団。

 仮に強盗目的だったにしても、妙な感じはする。

 そもそも、ここで昏倒している7人では、とても里のゴーレム達を倒しきれるとは思えないのだ。

 対ゴーレム戦を多少やれそうだったのは盾持ちの騎士男だが、こいつとて、里の大量のゴーレムを一気に相手にできるような規格外の強さには見えなかった。

 いくらなんでも、やはり歩兵7人では――


 と、ここまで考えて、はたと気づいた。

 7人?

 地べたに倒れ伏す男達の人数を、改めて数え直してみる。

 ベコベコの騎士男に、顔の半分潰れた辮髪男。

 他に、ボロ雑巾状態の奴らが5人。

 やはり7人だ。


「……1人足りんな」

 不審者は8人いたはず。一体誰がいないんだ?

 ボロ雑巾状態の奴らは顔の判別などつかないが、全員鎧を着た戦士風だ。

 あ、そうだ。

 たしかもう一人、背が低くてローブを着た、魔術師風の男がいたはずだよな?

 奴の姿だけがどこにも見えない。

「あの野郎、戦闘のどさくさに紛れて逃げやがったのか」

 そういえばあの男だけは後衛で、こちらへ襲いかかっては来なかった。逃げようと思えば、逃げられたかもしれん。

 俺がそう結論付けようとしたとき、背後から声がした。



「くききっ、逃げ出すだなんて、ひでえ言い草だなァ」



 慌てて後方を振り返った。

 薄暗い木々の間の茂みの中に、ローブ姿の人物が立っている。

 カラスみたいな真っ黒いローブを着た、背の低い男。

 間違いない、先ほどの男だ。あんな所にいたのか。


「……まァ、んな事言ってさんざん誘いをかけてくるわりにゃあ、ゴーレムの位置取りには寸分の隙も作らねェ。おめぇ腕は立つようだが、殺し合いでの駆け引きには慣れてねェな?」

 奴の言葉で初めて意識した。

 ゴレが既に、俺をかばう位置に立っている。

 おそらく彼女は、かなり早い段階からこうしてくれていたのだろう。敵が真後ろに居たせいで、俺が彼女のポジション替えに気付いていなかったのだ。


 矮躯の男はゆっくりと歩きながら、再び苔の広場へと姿を現した。

 降り注ぐ木漏れ日が、その姿をくっきりと照らし出す。

 フードを目深に被ったその男の様子を改めて見た俺は、ふと首をかしげた。

 この男、果たして本当に魔術師なのだろうか……?

 確かにローブ姿ではあるし、戦闘中もすぐに前衛の背後に隠れてしまった。だからてっきり、援護を担当する魔術師なのだとばかり思っていた。


 だが、何だかこいつの恰好は、少しばかり妙なのだ。

 身に纏う黒いローブは、これまでに見てきた魔術師達の物とは、デザインが大きく異なっている。裾の部分なんてギザギザしているし。

 最も特徴的なのは、ローブの肩に大量についた羽根飾りだ。しかもこいつが、鳥の羽根などではない。透き通った薄羽の、トンボか何かの昆虫のような羽根だ。

 そして首の部分からは、オカリナのような笛らしき物を下げていた。

 このような珍妙な格好をした奴は初めて見る。一体何者だろう。


 と、まぁ正体が気にはなるものの……。

 この男の様子からして、切った張ったの立ち回りはしそうにない。見たところ武器らしき物は持っていないし、腕力でも俺が勝ってしまいそうな雰囲気だ。

 考えてみれば、既にこいつらは全戦力の8人中、実に7人を失っている。こちらに高速接近戦仕様のゴレがいる状態で、相手の前衛は1人も残っていない。

 正直なところ、もはや趨勢は決しているように思う。

 これ以上、無駄な暴力の応酬をする必要などあるまい。

「なぁ、あんた。こうして味方が全滅した以上は、こちらに従ってくれないか。事情が不明だし、里の方まで同行してもらって詳しい話を――」


「くくっ……くひ……くきききききっ!」


 突然、ローブの男が甲高い声で笑い出した。

 その異様な光景に、俺はぎょっとした。

 このとき奴が、頭に被っていたフードをさっと取り払った。


 布の下から現れたのは、四十か五十代くらいの男の顔だ。

 目はぎょろりとしていて、前歯が出ている。

 なんとなく、鼠のような顔だな、と思った。


「くっひひひ! やっぱ操作術がすげぇだけで、戦いは素人だなおめェ。既に準備は整ってんだよ、俺の勝ちさ」

 そう言ってゲラゲラと笑う鼠顔の男。

 いつの間にか、首から下げていた笛を口元に咥えている。

「おめぇはなァ、最初の出合い頭に、まず俺を殺しておかなきゃならなかったんだよ。甘ちゃんの若いゴーレム使いさん――」


 言うが早いか、男は笛にすっと息を吹き込んだ。

 一瞬、笛の中に魔力の粒子が集束するのが見えた。

 あれは、風の粒子か……?

 笛から発した奇妙な風切り音のような音色が、木々の間に鋭く鳴り響く。

 ざわざわと、森の空気が微かに震えた気がした。


「一体何を……」

 言いさして、異変に気付いた。

 鼠男の足元周辺の地面が、泡立つように、ボコボコと盛り上がっている。

 直後、まるで火山が噴火するかのごとく、大量の土砂と苔が周囲に舞い飛んだ。

 爆発したわけではない。

 地面を突き破り、巨大な何かが地表に躍り出たのだ。


 突如土中から現れた長い影。

 その姿は、全体的に黒く、不気味な光沢を帯びている。

 頭には、触覚と巨大な顎。

 節くれ立った長い胴体から生えた無数の歩肢が、それぞれまるで意思を持つかのように、ぞわぞわと蠢いている。

 百本はありそうな、その足。


 ――それは、巨大な1頭の百足(むかで)だった。


 目の前にとぐろを巻くその巨大な虫を、俺は茫然と見上げた。

「ありえん、でかすぎる……」

 地表に露出している胴体の長さが、7・8メートルくらいはある。長さだけなら、この時点で既に重ゴーレムの体高以上だ。しかもこいつは、地中に半身が埋まっている状態でこの長さなのだ。実際の体長はもっとあるはず。

 もし俺がか弱い子女だったなら、確実に卒倒しているであろう光景だ。

 俺は見た目で動物を判断しない人間だし、別に虫嫌いでもない。だが、ここまで巨大な昆虫だと、少し話が違ってくる。こいつを実際に目で見て肌に感じる印象は、まず第一に、グロテスクだとかどうとかではないのだ。湧き上がってくる本能的な恐怖感の方が、完全に勝ってしまっている。

 何より知性の見えないその複眼からは、意思疎通の可能性がまるで感じられなかった。


 立ちすくむ俺の様子に、鼠男は満足げな笑みを浮かべた。

「どうだ? 俺の可愛い蟲ちゃんはョ」

「む、蟲?」

「んー。まァ、見るのも初めてなんだろうなァ。俺の装束を見ても、“蟲使い”だとピンと来てねぇぐらいなんだ。無知ってのは、本当に怖いねェ……ひひっ」

「…………!」


 蟲使い。

 たしか“魔獣使い”の一種だ。

 魔獣使いというのは、一部の魔獣を使役することに特化した魔術師のことである。土属性の“ゴーレム使い”や、(けつ)属性の“魔術戦士”等のような、特殊魔術師の類型の、風属性版の一つに当たる。

 なんでも、彼らは風魔術を用いて魔獣を操るのだという。

 これまでも大きめの街などに行くと、ペット連れの魔術師を見かけることがあった。あの人達の全員がそうという訳ではないだろうが、一部は魔獣使いなのではなかろうかと思われる。

 元々動物好きな俺としては、ちょっとした憧れの職業だった。

 もちろん、俺は土属性しか使えない厳格な宗教に属している。風属性の適性が必要な本職の魔獣使いには、なれないんだけどな。


 ただ、『魔術入門Ⅰ』の解説には、魔獣使いの中でも、この“蟲使い”はかなり異質な存在だと書かれていた。同業の中でも異端の外道扱いされる、その異質な性格というのは――

 ……いや、まてまて。

 そんな事より、何だこのサイズ感は。

 蟲って、こんなにでかいのか!?

 てっきり、小さなハチやクモでも操るのかと思っていたぞ。何なんだよ、このクソでかいムカデは! こんなもん、ほとんど怪獣じゃねえか!!!


 そんな怪獣じみたムカデの足元に、蟲使いだという鼠顔の男は、涼しい表情で立っている。こいつ、本当にこの化け物を制御しているのだ。

「……蟲だけ里に先行させつつあったもんだからなァ。こうして呼び戻すのに、ちと時間がかかっちまった。おめぇが護衛を一瞬で壊滅させた時にゃ、流石の俺も肝が冷えたね」

 薄笑いのままそう言った男は、視線を下に落とした。

 そこらの地面には、ボロ雑巾と化したオシャレ盗賊団が転がっている。

「ったく、今回俺には選りすぐりの護衛を付けるって話だったのに、蓋を開けてみりゃこのザマだ。……まぁ、冒険者風情なぞ、所詮はこんなもんってことか」

 やはり野良犬は野良犬だな、と、男は吐き捨てるように呟いた。

「だけどその点、おめぇは無名のくせに、べらぼうに強ェ。くひっ、田舎ゴーレム使いってのは、看板倒れのこいつら冒険者なんぞよりも、随分とマシみてぇじゃねェか」


 は……?

 この盗賊団、冒険者さんだったのか??

 ちょっ、やべえ。うっかりぶちのめしちまったぞ!!!

 冒険者パーティを壊滅させるとか、これって俺が完全に悪者のパターンじゃね!?

 いや、待て、落ち着け。深呼吸だ。

 それよりも今こいつ、もっと聞き捨てならない事を言った気がする。

「蟲を里に先行、だと? お前ら、一体何をするつもりだったんだ」

「んンー? ひひっ。ゴーレムの表土索敵ってぇのはョ、正面からやりあうと、えらく面倒くせぇだろ?」

 そう言った鼠男は、足元の地面を指さした。

「だから、土の中から蟲を放ってな、内側からおめぇらの里を食い荒らさせる算段だったのョ。……まァ、余計な邪魔が入っちまったおかげで、ちっとばかし予定が遅れそうだがな」

「な、こいつ……」

 絶句した。

 この男、こんな虫の化け物を、里の中に放つつもりだったのか。

 もしあのまま里で籠城戦に持ち込んでいたら、実は、相当にやばかったんじゃないのか。


 同時に、この話を聞いた俺の中で、ある一つの線がつながった。

 アセトゥが感じていた表土索敵の違和感の正体は、土の中に潜っている、このムカデだったのかもしれない。

 思えばゴレも、こいつらに対しては、えらく長時間の探りを入れていた。

 まるで、相手のことを掴みかねているみたいに。

 彼女が長距離の索敵で一瞬上の空になる事自体は、今までにも確かにあった。だが、よくよく考えてみれば、あんな長時間の上の空は初めての出来事だ。


 何てことだ。

 土中の敵は、ゴーレムの表土索敵を掻い潜ってしまうのか……?


 戦慄する俺の眼前で、鼠男の周辺の地面が、再び一斉にボコボコと盛り上がり始めた。

「……おや。他の百足ちゃん達も、ようやくお戻りみたいだなァ」

「他のムカデ!? こ、こいつだけじゃないのか!」

 こんな化け物ムカデが、他にもまだいやがるというのか。

 俺は慌てて身構えた。

 その瞬間。

 地面を派手に突き破り、複数体の巨大な長い影が、破竹のごとく次々と出現した。

 舞い上がる土砂に、俺は思わず顔をしかめる。

 

 眼前に幾筋もうねる、7メートル級のムカデの巨体。

 最初の1頭よりもやや後方に出現した、新手のムカデ達の数を確認した。

 ……4頭いる。

 全部で5頭になってしまった巨大ムカデの塊が、その不気味に黒光りする長い身体で、鼠男を囲むようにぞわぞわと蠢いている。


「こ、こんなに数がいやがったのか……」

 5つの頭が蠢動する様は、まるっきり、ムカデで出来たヤマタノオロチだ。

 背筋が凍る光景である。

 ギュッギュッと、耳障りな音があたりに響く。

 これ、もしかしてムカデの鳴き声か……?

 ムカデって、でかくなると鳴くのか。知りたくなかった、そんな事実。


「ひい、ふう、み……よォしよし。おかげさまで、無事に5頭そろった」

 指でムカデを数えていた鼠男が、視線をこちらに戻した。

 そして、長い前歯をのぞかせて、にいっと笑った。


「……――んじゃ、時間稼ぎのお喋りも、ここらで終いだなァ」


 奴の笛が再び、その口元に運ばれていた。

「あっさり始末させてもらうが、悪く思うなョ。俺には後の仕事が、つかえてるんでな。きひひっ」

 はっとした。

 先ほどこのムカデ達を呼び出した手法からして、おそらくこの男は、あのオカリナの音で蟲を操る。もう一度あの奇妙な音色が響き渡った瞬間に、ムカデが殺到してくる公算が高い。

 ……まずい。敵の能力が不明な上に、距離が近く、数が多い。

 今はこうして前面に対峙しているが、これがもし包囲状態に持ち込まれると、ゴレは俺のことが心配で動けなくなる。

 躊躇している場合ではない。

 速攻で決めるしかない。


「――ゴレ! ムカデをぶっ飛ばせ!!!」


 俺の声をトリガーに、ゴレが閃光となって突撃した。


 狙いは、先頭に突出している1頭だ。

 黒光りするムカデの長い胴体に、竜巻のように猛烈に横回転する、ゴレの白い回し蹴りが炸裂した。

 直撃。

 瞬間、空気が破裂したみたいな爆音が響く。

 すさまじい蹴りの威力と衝撃だ。

 土中から無理矢理掘り返されたムカデの全身が、側面に向かって吹っ飛ぶ。

 横手の森に激突した巨大な体躯が、メリメリと音を立てて木々をなぎ倒した。

 そのまま数本の木を巻き込んで倒壊させた後、ムカデの長い胴体は、でろんと地面に横倒しになった。


 決まった。一撃だ。


 こうして掘り起こされたムカデの全身を見ると、本当に長い。

 全長十数メートルは優に超えている。

 完全にモンスターだ。


 だが、やはり、うちのゴレの敵ではない。

 これならいける。

「良くやったゴレ! このまま残り4頭も一気に……」

 そこで言葉を止めた俺は、首をかしげた。

 今、ゴレの背中がほんの少しだけ、たじろいだような気がしたのだ。

 何だろう、今の動きは。

 あの感じは、動揺、か……?

 ゴレのやつ、一体どうしたというのだ。

 訝しんだ俺は、ゴレの視線の先の、ムカデの死体の様子に目を凝らした。

 そしてその直後、眼前の信じがたい光景に、思わず目を見開いた。


 横倒しになった巨大ムカデの歩肢が、まだ、ぞわぞわと動いているのだ。


 しかも、それで終わりではなかった。

 あろうことかこのムカデは――再び、起き上がったのである。


 黒い巨蟲が、ゆっくりと鎌首をもたげていく。

 知性も感情もない複眼が、こちらを睥睨した。

 ギュッギュッと、不気味な鳴き声が周囲に響いている。



「は……?」


 俺とゴレは、仲良く目を見開いて固まった。

 こいつ、死んでいない。

 生きている。

 ゴレの回し蹴りの直撃を食らって、まだ、心臓が動いている……。

 


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