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破滅の魔導王とゴーレムの蛮妃  作者: 北下路 来名
第3章 はじめての街
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第29話 愛娘と恋愛フラグ


 

 結論から言う。フラグもくそもなかった。


 紹介しよう。魔道具屋のハゲの愛娘さんだ。

 先ほどから楽しく談笑させて頂いている。

 美しい栗色の髪をした、可愛らしい娘さんだ。

 名前はテルゥさん。

 可憐な良い名だ。

 今、彼女は、俺の膝の上に座っている。

 俺が「いくつ?」とたずねると、恥ずかしそうにしながら、小さな指をぱっと5本広げて、「5さい」と答えてくれた。

 

 5歳……。

 

 おい。

 おいハゲ。お前、何だよ5歳って。

 そりゃ、もちろん小さくとも立派なレディだ。

 俺とて淑女として丁重には接するが。

 でも、お前の老けっぷりからすると、娘さん絶対二十代くらいだろ……。

 お前は何て役に立たないハゲなんだ……。


 しかし、テルゥちゃんは歪みきった邪悪なクソハゲにはまったく似ず、非常に性格の良い子だ。今も珍しい客人の俺に対して、うれしそうな顔で、膝の上からにこにこと話しかけてくる。俺はDNAの謎と神秘を感じた。

 まぁ、亡くなったお母さん似なのだろうな。

 ハゲの奥さんはテルゥちゃんと同じ病気になって、治療の甲斐もなく一昨年亡くなってしまったそうな。

 奥さんを亡くし、病気の幼い娘を借金を背負いながら一人で必死に育てたハゲが、心労ですっかり老け込んで禿げ散らかしてしまったというのも、まぁ、分からない話ではない。

 

 今は元気なこの子だが、かつて病気だったという話はおそらく事実だと思う。

 この世界の児童の平均的な発育状況がどうなっているのかは知らないが、街の人々を見る限り、現代の元の世界とそう変わらないはずだ。ここは食糧事情がかなり豊かなようなのだ。

 にもかかわらず、テルゥちゃんは身体がとても小さい……。

 正直なところ、俺は最初、幼稚園の年少さんくらいだと思っていた。

 これは最近まで長い間病気で臥せっていたせいだと思う。

 こんな小さな娘さんと頼りにならない上にクソなハゲを残して世を去った奥方の心中を思うと、俺は泣きたい気持ちになる。


 ちなみに、現在ここはハゲの自宅だ。

 例の店からはいくつか路地を隔てている。

 先ほどの騒ぎの後、ハゲからここに招かれ、しばらく宿泊させてもらう事になった。

 こちらにとっては、渡りに船な話だ。手持ち資金こそ多少は出来ているが、正直、金の使い方を含めて、まだ右も左も分からないような状態なのだ。この提案は、俺としても蹴る理由がない。

 ハゲの家は、わりとでかい。この街では結構珍しい2階建てである。

 下手に小金を持っていたからこそ、ああいう連中に食い物にされたのだろう。

 店の方は、流石に今日はもう商売にならないので、早々に店じまいしたようだ。

 

 膝の上のテルゥちゃんは、先ほどから異世界幼女トークを炸裂させている。俺も何となく話を合わせていた。この子は最初ちょっとだけ人見知りをしていたのだが、もうすっかり打ち解けてしまった。本当に素直な良い子だ。何度でも言わせてもらうが、邪悪なハゲの子とはとても思えん。

「それでね、テルゥはおっきくなったらカモチやさんになってねー、えっとね、それでねー」

「へぇ、カモチ屋さんか。素敵だね。テルゥちゃんならきっとなれるよ」

 まぁ、カモチというのが何なのかは知らんが、ハゲの店を継がないというのはそれだけで評価に値する。がんばれ、テルゥちゃん。

 テルゥちゃんはくりくりとした瞳を輝かせ、はにかんだような顔で微笑ましい幼女発言を続ける。

「それでねー。テルゥはねー、えっとねー……」

 彼女は、俺の膝の上で足を揺らしながら、もじもじしはじめた。小さい子は俺達とは違って、考えていることを言葉にするだけで大変なのである。

 テルゥちゃんが、ぱっと可愛らしい笑顔を上げた。


「テルゥはね、ネマキおにいちゃんのおよめさんになるの! えへへ」


 なんと、驚いた。これは情熱的なレディだな。

 ふっ……。ありがとう、テルゥちゃん。

 無垢で優しい君のその言葉は、おそらくはきっと、心からの本当の気持ちなのだろう。

 でもね、お兄ちゃんは知っているんだ。

 君はあと十数年もすれば、お兄ちゃんの手元から、どこぞの知らない男の元へ幸せに巣立っていってしまうということを。

 俺は哀愁に満ちた気持ちで、彼女のふわふわとした淡い栗色の髪の毛をそっと優しくなでた。

 テルゥちゃんはくすぐったそうにしている。


 このとき、何かものすごく不穏な気配を感じた。

 見ると、隣に座っていたゴレが、テルゥちゃんに手を伸ばそうとしている。

 その腕は、ビキビキと激しく震えている。

 あれ? 何だ、ゴレしか居ないのか? さっきのやばい気配は、一体何だったのだろう。俺はてっきり、隣に何か魔獣がいるのかと思ったのだが。

 ひょっとすると、俺も戦いの連続で過敏になっているのかも知れないな。

 さきほど感じた禍々しい気配は、きっと気のせいだろう。

 だって、ゴレは別にテルゥちゃんに酷いことなどするまい。

 こいつは普段俺のことを完全に赤ちゃん扱いしているくらいで、無駄に母性に満ち溢れているからな。多分、小さい子とか大好きなんじゃなかろうか。

 なるほど、この手はテルゥちゃんの頭をなでようとしているのだろう。

 やはりゴレは子供好きだ。

「うんうん、ゴレはきっと良いお母さんになるな」

 まぁ、ゴーレムが子犬を産むのかは知らんが。

 

 この瞬間、ビキビキと激しく震えながら徐々にテルゥちゃんの頭部に接近しつつあったゴレの手が、ぴたりと動きを止めた。

 そして、テルゥちゃんの頭をなではじめた。


 ああ、美しい光景である。

 し、しかしゴレよ、お前なんだか、なで方が雑じゃあないか……?

 俺をなでる時はいつも、もっとこう、繊細な硝子細工でもあつかうみたいに、そっと優しく触れてくるような気がするんだが。

 ガシガシとなでられるテルゥちゃんはすごく喜んでいるので、まぁ、これで良いのかな……。


 そしてこの時、俺はもう一つの不穏な気配に気づいていた。

 気配の主は、テーブルを挟んで反対側のソファに座っている、ハゲだ。

 先ほどテルゥちゃんが俺に幼女プロポーズをかました直後から、禿げあがった額にビキビキと血管が浮いている。

 血圧が上がりすぎて早死にしそうである。

 俺はとりあえずハゲの寿命をさらに縮めるべく、挑発することにした。

「やっぱテルゥちゃんはどこぞの無能な父親とは違って、人を見る目があるな。立派な娘さんだ」

 ハゲの頭皮の血流は促進され、もはやピンク色になりつつある。

「昼の一件は確かに感謝している。だが、それとこれとは話が別だ。……うちのテルゥはおまえさんにはやらん。勘ちがいするなよ」

「ふん。どこに嫁に行くかは本人の自由意思の問題だろうが」

 ふふん、度し難いほどに愚かなハゲだな。

 幼女特有のリップサービスを真に受けて、大人気もなくキレるとは。

 貴様がいくら溺愛しようとも、テルゥちゃんはいずれどこの馬の骨とも分からない男の元へと旅立っていくのだ。ざまぁないな。そして、それが彼女の幸せのためでもある。

 まぁ、その時は貴様の完全なるおごりで酒でも飲みながら、愚痴ぐらい聞いてやらんこともない。悔しがるお前の姿を肴に、盛大に嘲笑ってやろう。



------



「先ほどは助けてもらって感謝する。改めて自己紹介させてもらうよ。わしの名はチョトスという。知っての通り、このティバラの街で魔道具店をやっとる」

 薄い頭髪を後ろになでつけた小柄な中年男が自己紹介をした。

 現在、俺達は先ほどの居間から男二人で少し移動して、奥まった場所にあるハゲの仕事机の前に座っている。

「俺はネマキ・ダサイだ。あっちの部屋でお宅の娘さんを抱っこしてるのが、相棒のゴレ。本名はゴレ太郎という」

 俺も店先で既に名乗っているのだが、改めて自己紹介をしておいた。

 このハゲにはしばらく家に泊めてもらうことになるから、まぁ一応な。

 

「なるほど、蛮妃“ゴレタルゥ”か。殺戮と嫉妬の美神の名は伊達ではないというわけだな」

 …………!!!

 お前もか、ハゲ! お前も“ゴレタルゥ”と言いやがるのか!

 だが、この程度の事は想定の範囲内だ。

 スペリア先生のときは心が折れてしまったが、今度こそ、この世界の人間に俺のナイスなネーミングセンスを絶対に認めさせてやる。

 俺は極力語尾に力を入れ、はっきりとした発音を心がけた。

「俺の“ゴレ太郎”は最強だからな。あの程度のチンピラなんぞ余裕だ」

「お前さんはチンピラなどと言うが、奴は『壊剣』のダズウと言ってな。この一帯で知らん者などおらん、札付きの無法者だったんだぞ? まぁ、確かにおまえさんの操る“ゴレタルゥ”の前では、本当にただのチンピラあつかいだったんだが……」

 くッ! こいつまだゴレタルゥと言いやがるのか。

 なんと強情なハゲだろう。

「ふん、あの程度の奴、うちの“ゴレ太郎”なら、例え100人かかって来ようが楽勝だ。“ゴレ太郎”は無敵だからな」

「お前さん、よほど自分の腕と“ゴレタルゥ”の性能に自信があるんだなぁ」

 こ、こんのクソハゲ……! だから、ゴレ太郎だと言っとろうが。

 ぐぬ……! まだだ、まだあきらめんぞ、俺は。



 5分後。

「はあ。もういいよ。ゴレタルゥで……」

「? 何を言うとるんだ、お前さんは」

 俺の必死の努力も虚しく、無能なハゲは結局“ゴレ太郎”を正しく認識できなかった。

 ぐったりと憔悴しきった俺の様子に、ハゲは首をかしげている。

 俺の心は、またしても折れていた。


 と、ここでハゲがひとつ大きな咳払いをした。

 そして何やら居住まいを正し、俺の方へと向き直る。


「ネマキよ、土大鬼の魔導核の買い値を不当に低く見積もった件はすまなかった。こんな事になった以上、そこにある魔導核は……おまえさんが元の値段で買い戻してくれて構わん」

 

 ハゲは真剣な表情である。

 実は、さきほどから目の前の仕事机の上には、例の猿の魔導核入りの皮袋が置いてある。

 長髪のチンピラがゴレに骨を粉砕されたときに落としていった物だ。

 俺が一応回収しておいた。ハゲは床に転がっていたからな。貴重品をそのまま放置しておくわけにもいくまい。

 とはいえ、俺は一度売却している以上、これはあくまで現在ハゲの所有物にあたる物だ。

 

 なるほど、買い戻し……か。

 俺が元の値段でハゲから魔導核を買い取るわけだから、要は、売る前の一番最初の状態に戻るってことだよな。

 ま、これが妥当な落としどころなのかもしれないな。

 この世界の商慣習については知らないが、おそらく、これが現在のハゲの経済状況で俺に対して提示できる限界ギリギリの誠意なのだろう。

 この俗物のクソハゲにしては、殊勝な判断ではある。

 俺はうなずいた。

「分かった。こちらはそれで異存はない。この件は水に流す」

 幸い、今日は昼飯を例のピザ夫におごってもらっていた上に、まだ何の買い物もしていないから、まったく金を使っていない。

 したがって、魔導核の売却代金は手付かずで丸々手元に残っている。

 これをそのままハゲに渡せば、この話はすべて決着だ。

 ピザ夫のおごりのおかげで、大層手間が省けた。

 ありがとう、ピザ夫。もし次があったら、今度は俺がおごる。


 売却代金の硬貨を取り出して、机に置いた。

 代わりにハゲが机の上から皮袋を拾い上げ、俺に差し出す。

 それを受け取り、鞄に戻そうとした。


 何故か、ハゲが皮袋を持った手を離さない。


「……おい」

「す、すまん。つい……」

 おい、ハゲ!

 俺はハゲから無理矢理皮袋を奪い取った。

 なんというがめつい男だ!


 俺は半ばあきれつつ皮袋を鞄に入れようとして、ふと手を止めた。

 受け取った皮袋に、何となく違和感がある。

「……おい。何だかこれ、袋の中身がさっきより減ってないか?」

「…………っ!」

 ハゲは冷や汗をかいている。

 よく見れば、ハゲは手の中に黒い魔導核を握っていた。

 おい! ハゲ!!!

 俺はハゲの手から魔導核を奪い取ろうとする。

 ハゲは泣きながら抵抗する。

「後生だ! 頼むネマキ、頼むぅ! これだけはあっ!」

 しかし、俺はハゲから魔導核を無慈悲に回収した。


「はぁ……」

 俺はため息をついた。

 そうなのだ。ハゲのこの見苦しい行動には、理由がある。

 取り立て屋のチンピラ達が手を引いたからといって、ハゲの借金が消えたわけではないのだ。奴等の首魁の大男は言っていた。なんたらいう商会からの依頼で取り立てを代行していただけだと。

 たしか、ペイズリー商会とか言ったか。

 ペイズリーってなんか洋服の柄みたいな名前だな。どうでもいいが。

 ハゲの借金は、大方そのペイズリー商会から借り入れた物なのだろう。つまり、大元の商会への借金をきちんと返済しない限り、いずれまた別のチンピラがやってくるというだけの話なのだ。

 クソハゲがこんなにも魔導核に固執しているのはそのせいだ。


 結局のところ、この男の抱える問題はまだ何も解決していない。

 俺だって、あのような犯罪暴力集団を用いて、妻を亡くし病気の小さな娘をかかえる小市民から苛烈な取り立てを行うその商会とやらに対して、全く思うところがないわけではない。いや、正直なところ、ほんの少し、ほんの少しだけだが……苛ついている。

 しかし、俺の荒れた気分にまかせて、そんなところに核弾頭のようにゴレを投下して全てを灰にしてしまうことなどできない。

 そんなことをしたら、俺の方が完全に極悪犯罪人だ。

 だって、金の貸し借り自体は正当な経済行為なのだ。

 ゴレによって右上半身の骨を滅茶苦茶にされた不運な長髪のチンピラが、たしか「借りた物は返すのが世の中の常識」みたいなことを最初に叫んでいた。この点に限っていうならば、まさに彼の言う通りだ。

 結局のところ、問題のある商会から金を借りたハゲの自己責任でもある。

 

 まぁ、奥さんやテルゥちゃんの薬を買うために、必死だったのかもな……。

 い、いや違う。きっとこの強欲で短絡的なクソハゲに全ての責任がある。


「はぁ……」

 俺は再び、ため息をついた。

 そして、手に持つ皮袋に視線を落とした。袋の口から、煌めく黒い結晶の一部がのぞいている。

 俺にとってはこんな石、ただ拾っただけの、元々あぶく銭も同然の物だ。

 こんなつまらない石ころで、今一生けんめい生きている人の人生が変わってしまうというのは、何だかやりきれない気持ちになる。


「この魔導核がいくつあれば、あんたの借金を返せるんだ?」

「4つ……いや、3つあればおそらく返せるはずだ」

 そんなもので良いのか、意外と少ないな。

 てっきり、全部売り払ってやっと返済できるのかと思っていたが。

 ……ん?

「っていうか、ハゲてめえ! 3つで足りるのに全部買い叩きやがったのかよ!!!」

 ふっざけんなよ、このクソハゲが!

 俺はハゲの襟元をつかみ、ぶんぶんと首を揺さぶった。

「すまん、すまんかった! ま、まさかあんな口上で、本当に魔導核を二束三文で全部売り払うアホがいるとは思っとらんかったんだよおお」

 頭髪を振り乱し、再び落ち武者と化したハゲが何やら叫んでいる。

 貴様は謝罪してるのか俺をディスってるのか、どちらかはっきりしろ!


「はぁ……」

 俺はハゲの襟から手を離し、三度目のため息をついた。

 そして、皮袋の中から魔導核を3個取り出して、机に置いた。

 少し考えて、もう1個取り出した。

「……1つは店の修理代だ。うちのゴレが借金取りを蹴り飛ばしたときに、壁を壊してしまったから」

 俺は机上の4個の黒い魔導核を、ハゲの方へと押し出した。


「いいか、これは施しじゃないぞ。投資だ。これで借金を返して、店の経営を立て直せ。たっぷり利子つけて返せよ」


 嘘だ。

 ただの方便である。


 この魔導核はハゲにくれてやるつもりだ。

 こんな口約束になど、何の意味もないからだ。

 本気なら、契約書でも書かないといけない。でも、俺はこの世界の契約書式など知らない。

 そもそも投資とかあるのかこの世界?

 いや、普通に翻訳されているし、多分あるのだろうな。


「す、すまない、ありがとう…………。ありがとうネマキ……」


 魔導核を受け取ったハゲの手は、アル中患者のようにぶるぶると震えていた。

 見ると、ハゲは小汚い顔をくしゃくしゃにして、ばっちい鼻水を流してむせび泣いている。

 おい、気色悪いからやめろ。やっぱ中止にするぞ。

 というかお前、本当にしっかりしろよな、ハゲ……。

 娘さんの将来も、お前のふんばりにかかってるんだぞ。


 …………。

 まぁ、あれだ。俺としては強欲なこのクソハゲに協力するのは実に不本意だが、こうでもするしかないだろう。

 このままにしておくと、そこにいるテルゥちゃんには、悲惨な未来が待っている予感しかしない。まず間違いなく、年頃になったらチンピラどもの手でいかがわしい変なお店に売られてしまって、本当にお兄ちゃんが水揚げして責任もってお嫁さんにしてやる以外に方法がなくなる。

 俺はあの子の涙も、そんな悲しい未来も見たくはない。

 そう。全ては可愛い妹分のテルゥちゃんのためであって、ハゲはついでだ。

 ハゲはどうでもいいのだ。勘ちがいしないでほしい。


 俺は、魔導核を握りしめて嗚咽する情けない父親の姿に、ため息をついた。

 そして、何ともなしに、彼が一番大事にしている娘さんの姿を眺めた。

 今俺達は、借金ハゲ男とゴーレムのヒモ男という、まるでダメな男同士の見苦しい話し合いをしている。教育上良くないので、幼いテルゥちゃんは少し離れた居間のソファで、ゴレに抱っこしてもらっていた。

 こうして眺めていると、ふたりは何となく姉妹のように見えなくもない。

 テルゥちゃんはかなり色白だし、全体的に色素が薄い。ゴレは言うまでもなく真っ白だ。



 ……というかだ、ゴレよ。

 お前は先ほどから俺のことをガン見しながら、テルゥちゃんの頭をがしがし乱暴になでまくっているが、一体何をアピールしたいんだ??

 まぁ、なでられているテルゥちゃんはきゃっきゃと喜んでいるから、特に問題は無いのかな……。

 


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