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1-13 【因縁の決着】

「タツミ様、私とハルベリアさんでキース様の配下3人を抑えます。その間にキース様との因縁に決着を!」


エリスがそう言い、ハルベリアの横に並び立つ。


「わかった。助かる!」


タツミはキースの方へと駆けていく。


「あ、あの、エリス・シアンブルと言います。よ、よろしくお願いします。」


亜人である証、頭の上に生えている猫耳を隠さずに名乗るエリスが、緊張しつつもそのままの姿でハルベリアへと話しかける。


「ハルベリア・レオネルと申します。」


ハルベリアはじっとエリスの猫耳を見る。


「あ、あの、私は、その、亜人ですので!」


ハルベリアの目線に気付き、猫耳を隠したくなる衝動に駆られるエリスであったが、コディに言われたことを思い出し、ありのままで自己紹介をする。


-堂々としていなさいな。このゴミクズが認めた時点で、亜人だろうが何であろうがアナタがそれを恥じることを、この男は好かないはずです。-


少しギクシャクしながらも、語尾を変に強く発音してしまっているエリスが面白くなって、ハルベリアは笑う。


「ふふっ・・・タツミ様の最初の配下は亜人の方ですか。やはりそういうお方なのでしょうね。」


凛とした雰囲気を纏っていたハルベリアが微笑む姿を見たエリスは


「笑うとすごく美人さんですね。」


つられてにっこり、笑顔を漏らす。


「おーやおや、笑っちゃってー、余裕だなぁ嬢ちゃん、そしてリオネルさんよ。」


大剣を振り被りながら男は距離を詰めて来る。


「アドリアン、援護するぜ!」


大剣の男の後方から弓を構えた少年が2人へ向けて矢を放つ。


その矢は空中で分裂し、複数の矢へと増加、無数の矢が2人に降り注ぐ。


「助かるよ。セザール。」


アドリアンと呼ばれた大剣を持った男が、矢を放った少年、セザールに感謝の意を述べつつ前進。


「私が落とします!」


その矢に向けてエリスが両手の指を四本ずつクロスさせ、魔法を放つ。


クロスした穴より放たれる無数の風の弾。


それはまるで機関銃のように弾を放ち、矢を次々と落としていく。


「しゃーはは!ここだ!」


いつの間にか接近していた長身細身の男が、再び両腕に魔力を纏い、今度はエリスを狙って攻撃を放つ。


「見えています!」


しかし、それに気付いていたハルベリアが身を挺して鎧で受ける。


「ぎゃあああああああああああ!またあああああああ!!!」


長身細身の男が再び悲鳴を上げながら遠く距離を取って離れる。


「やれやれ、フェイサーも可哀想にな」


アドリアンが、再び同じ部位にダメージを負った長身細身の男を見ながら憐れむ。


「くそう!くそう!くそう!」


フェイサーと呼ばれた男は両腕を摩りながら涙目でハルベリアを睨む。


「絶対にタツミ様の邪魔はさせません。」


エリスとハルベリアが肩を並べて構えた。














タツミの上段蹴りをキースは身体を仰け反らせて躱す。


足を空振りした勢いを殺さず、タツミはそのまま軸足でジャンプ。


身体を捻り、もう片方の足の空中回し蹴りがキースの胴体に炸裂する。


「はっ・・・そんなもんかぁ!」


胴体に蹴りを受けつつ、キースはタツミへ剣を向ける。


「!?」


「潰れろ!」


剣先の空間に魔法陣が展開。その術式から無数の氷の礫が放たれる。


ダンッ!


タツミは長棒の先を大地に叩き付け、身体を宙へ浮かし回避。


今度は空中で両足をキースの首に巻き付ける。


「ぬおっ!?」


そのまま落下する勢いを乗せてキースを挟みながら身体を畳み宙返り、キースの顔面を地面へと叩き付ける。


キィンキィンキィン


追撃の体勢を取ったタツミの周囲に甲高い音と共に魔法陣が描かれる。


「やべっ」


三方向から同時に炎柱が放たれ、咄嗟に身を屈めて回避。


タツミの頭の上を三筋の炎が迸る。


ゴッ


タツミが炎を回避している間に起き上がっていたキースが足の裏で身を屈めたタツミの顔面に蹴りを入れる。


「この駄馬がぁぁぁぁ!!」


顔面にまともに蹴りを受けたタツミは吹き飛び、キースと距離を離される。


「この俺の顔に土を着けやがった!駄馬風情が!」


激昂するキース。


「はっ、土が着いてる方がハンサムになってるぜ?クソ野郎。」


顔面を蹴られ、流した鼻血を拭いながら立ち上がり、タツミは返す。


思ったよりも遠くに蹴飛ばされてしまった。


距離を取ればキースの方が圧倒的に有利になってしまう為、もう一度距離を詰めようとタツミは真っすぐ跳躍。


「もう近寄らせねぇよ!駄馬が!」


キースは魔法陣を複数展開、正面から近づいてくるタツミに対して炎の柱を重ねて放つ。


「ちぃっ!!」


咄嗟に左方向へ身体を転ばせるも、避けきれず身体の右半分が炎に呑まれる。


さらに避けた後の隙を突くように氷の礫がタツミへと降り注ぐ。


「くそったれっ!」


息もつかせぬ魔法のラッシュがタツミをキースへと近付けること拒む。


「身体強化くらいしか取り柄のないお前が俺に攻撃を当てようと思えば近付くしか無い。だが、常に魔法を放出し続ければお前は俺に近付けない!」


キースが身体強化の不得意な人間であれば、強化されたタツミの速度に反応できず、距離を詰めるのがもう少し容易であっただろう。


しかしキースもタツミ程では無いにしろ、ある程度のレベルの身体強化を使うことができる人間。


近付いてくるタツミに反応できる程の能力は持っている。


「さて、どうするか」


何とかして距離を詰める必要があるタツミはキースを前に考える。


「どうもさせねぇよ!死にさらせ!」


キースはタツミに休む間も与えず氷の礫を放つ。


「くそっ!考える暇もないか!」


タツミは身体を転ばせて礫を回避。


今まで何度も王城内でぶつかってきた相手。


そして何度も王城内で私闘を繰り広げては、侍従達に諫められ止められもした。


ある時は屋敷の中、ある時は訓練用の部屋、ある時は王城内の石床の上。


その度にタツミはキースのこの遠距離攻撃によって近付くことを防がれ、決着が着かないことが多かった。


「今日こそ!俺は!駄馬を殺す!」


攻勢と回ったキースは、ここぞとタツミを攻め立て、攻撃の手を休めない。


いつも誰かによって止められ、決着を着けることができなかった2人であったが、今ここに2人を止める者はいない。


ダッ!


キースの攻撃を避け、着地するタツミ。


|(何とかして近付かねぇと、このままじゃジリ貧だ。何か・・・何か手は無いか。)


と、そう考えるタツミの脳裏に先ほどのグロリアスモンキーのボスとの戦闘が蘇る。


(そうか・・・この手がある!)


「はははははははは!そのまま何もできずに死ね!」


相も変わらず怒涛の攻めをみせるキース。


氷の礫と炎の柱を躱し、タツミは自分の足元を長棒で力いっぱい殴打する。


ブワァッ!


巻き起こる土煙。


「なんだ!?」


一瞬、キースの視線からタツミの姿が隠れる。


そしてタツミの攻撃は、その一瞬キースの視線を遮るだけで充分届いた。


ヒュオッ!!


風を切る音が鳴り、土煙の中から高速で投擲された長棒が、キースの右肩を砕いた。


「がぁっ!?!?」


身体能力を強化したタツミが全力で投げた長棒は、キースの反応をもってしても回避しきることができなかったのである。


「さっき、群れのボスと戦った時にボスが使った攻撃方法だ。」


右肩の激痛に気を取られている間に距離を詰めるタツミ。

腰に挿してある木刀を抜き、横凪ぎの構え。


「くっ!」


なんとか反応し、銀の剣で対応しようとするキースであったが、利き腕の右肩の激痛がそれを許さない。


「遅ぇ!」


ギィィン!!


剣を持つ右腕が木刀で打たれ、銀の剣はキースの手を離れ宙を舞う。


「しまっ・・」


「終わりだ!!」


渾身の力を込めた袈裟切りがキースの左肩へと打ち込まれる。


「ぐはぁぁぁああああああっ!!」


メキッメキッ!


強化された骨が軋む音が鳴り、キースはその場へ倒れた。


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


息を切らし、キースの反応を見るタツミ。


微かに呼吸をしているのを感じ取り、安堵の感情がこみ上げてくることに気付く。


「こんな奴でも、死んでないことにホッとするんだな。」


タツミはその場に膝を着いて座り、息を整える。


「キース様!」


「大将!」


キース配下の3人がこちらの決着に気付き、声を上げ近寄ろうとするのを、エリスとハルベリアがその前に立ちはだかる。


「行かせません。」


そう言い放つハルベリアにタツミは声をかける。


「もういいよ、終わった。通してやってくれ。」


「・・・はっ!」


タツミの命令を受け、ハルベリアは3人の前に立ちはだかるのを止め、エリスと共にタツミの近くへ移動。


「ご無事で何よりです。」


エリスがタツミに声をかける。


「お前たちがあの3人を足止めしてくれたお陰だ。ありがとう。」


タツミは倒れたキースに駆け寄った3人を見ながら、エリスとハルベリアの2人に礼を言う。


「お前たちが入って来た方角に向かって進めば森を出た先に街がある。そこにコディがいるはずだ。連れてってやってくれ。アイツなら治療してくれる。」


タツミは3人にそう声をかける。


「あ、ありがとうございます!」


弓を持った少年、セザールがタツミへ深々と頭を下げ、大剣を持つ男アドリアンがキースを背負う。


「お、俺も腕を治療してもらいたい」


何故か両腕だけ大ダメージを受けている長身細身の男フェイサーもそれに加わり3人はタツミ達が来た方向へと去って行った。


「さてと・・・」


タツミは洞窟の方へと目線をやる。


まだ中に、もう一人のキースの配下である髪を無造作に束ねた身長の低い女性がいるはずである。


その人にも声をかけ、事情を説明し、グロリアスモンキーの子供たちを開放しようと思いタツミが立ち上がったその瞬間、


洞窟前の広場に予想外の人物が予想外の姿で現れた。


「タツミ・・・?なぜ君がここに?」


ダルミアン・ウィルフレッド。


今年成人の儀を迎えた勇者の子の中で最も優秀である人物だとタツミが考えていた人物と


成人の儀で見た覚えのある彼の配下の2人の人間が、それぞれ皆血まみれで怪我をした姿でそこに立っていた。




配下で一番誰が好きかって問われたら、私は間違いなくフェイサーが好きだと答えます。

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