都会の陰陽師 共通① 婚約者候補、鬼!?
「え…ツノ?」
「ごめんね俺達、みんな鬼なんだ」
――――――私の生活は、彼等との出会いで変化した。
あれは一週間前のこと。
イトコ婚の両親が私を実家へ連れて帰宅した日。
両親の実家はとにかく古くて、お金持ちか、危ない職業の人が住んでいそうな平屋敷。
―――
『君が灯音ちゃん?』
私に声をかけたのは青味がかった涼やかな黒髪の若い男性。
『はい』
『そいつか…』
『え!?マジでかわいいじゃん』
『お前は女なら誰でもだろ』
あとからいきなり四人の男性陣が、ぞろぞろ現れた。
いったいなんなんだろう。
そして、屋敷の奥、主の部屋に両親と行くことになった。
『あなたが灯音さん』
『はいそうです』
当主さんは見た目は80代くらい。でもしっかりしている女性だ。
『単刀直入に言うわ…あなたには、息子達のいずれかと結婚してもらいます』
本家がべつにいて、両親は分家同士。
私は内心、本家分家ってなにそれ状態だった。
取り合えず本家という偉い人には、息子がいて娘がいないらしい。
どういうわけか、鬼静目家は女性が屋敷の偉い人になる決まりがあるとのことで、私はこの家の息子と結婚することになった。
『あの、私まだ高校生なんですけど…』
『高校は卒業してからでも構いません。ただ約束をしてほしいの』
彼等は全員タイプが違う美形、モデルや俳優レベルに。
しかもお金持ちだし、普通に考えて、断る理由はない。
しいていえば誰にするか迷うことくらいだ。
むしろこんなかっこいいイトコを隠してたことが、どうしてって感じである。
『あの、むしろこっちがいいんですか?私ごときが選んじゃって…という気分で』
それに当主なら私より相応しい人がいるんじゃないだろうか。
『皆、自由を求めて都会に行ってしまったわ』
当主は悲しそうに頭をたれる。
『わかりました!いますぐには決められませんけど、卒業までには必ず決めますから!』
という約束をして、一泊することになった。
『じゃ、自己紹介といこうか。俺は、苗字はいいか。蒼騎だ』
さっきの青髪の人。
『オレは緋李。できればオレを選ばないでくれよ』
赤髪の彼はそれだけ行って去る。
『ボクは燈翠!よろしく、灯音お姉ちゃん』
どうみても小学生…緑髪の可愛らしい少年。
『まったくお兄さん達を差し置いて、先に挨拶をするなんて…』
ゆたかを…浴衣をはだけさせた金髪の男性が、やれやれといったポーズで立っている。
『私は壬琴だ。ぜひ私を選んでくれ』
金髪の男性は振り向きざまに微笑んで退室した。
『某は亞鎚だ。ではな』
『はい』
『どう足掻いても選ばれるのは、一人…であれば貴様等をこの土にかえすまでだ』
焦茶髪の男性はなにかを呟きながら部屋を出た。
明日は家にかえるだけだ。
『殺気!?』
なんて、時代劇みたいなことを言ってみる。
なんだか空気がよどんで寝苦しい。
『…そのまま睡魔へ堕ちるがよいぞ』
ヒモをひいて電気をつける。
『あなた誰!?』
部屋には着物を着た男がいた。
寝苦しかったのはこいつのせいだったみたいだ。
『邸内では我が術の効果は薄いか……』
男は懐から短刀を取り出す。
『うわああ顔はやめて!ボディにして!いやそっちもだめだけど!!』
畳のへりにあしがひっかかり、転んだ。
―――――切られる!
そう思っていたら。
『人ん家で何やってんだ?』
五人が駆けつけてくれた。
それにしても、皆頭の片方に角がはえて――――。
「どうして角が!?鬼!?まさかご当主は妖怪鬼ババア!?私を包丁で…」
「いや、ちげーよ。」
私はおちついたところで、蒼騎さんに説明をうけた。
彼等の正体は数千年前に滅んだ鬼、の血を濃く引き継ぐ一族だった。
ただし鬼に成るのは本家のみで、分家の両親や、私は人間なんだとか。
「でも少しは分家だって鬼の血が入ってるんでしょ?」
「いいや、詳しくは話せないが分家には鬼の血は入らない」
どういうことだろ。
まあいいや。とにかく寝よ。
「おいおい、まだ敵はいるんだが」
「こんな状況でよく眠れるな」
「そうだった!!」
敵のことを完全に忘れていた。
結婚するかもしれない相手が全員鬼だった
鈍器で頭を殴られた感じで、頭がパーンとなったから。
「灯音、ひとまず外に出て」
壬琴さんにお姫様抱っこされ、部屋から中庭にでた。
まさか王子様じゃなく、鬼さんにお姫様抱っこされている。
これなんて和洋折衷なの。
「まずは敵より先に壬琴を消すか」
「亞鎚さん、落ち着いてくださいよ」
「お前たちは、なぜ人でありながら鬼と成った」
「お前、見たことない鬼だ」
「当然であろう。つい先刻、1000年の眠りより目覚めたのだ」
「真鬼…実在したのか…
「なんだ。年寄りじゃん。お年玉ちょうだい」
「よくも…」
紫髪の男の様子がおかしい。
いやな感じの空気が彼からでてくる。
頭から角が二本、はえた。
もしかして、五人の角が一本だけなのは――――。
「覚悟!」
「おおっと!デカイ獲物発見だぜ!!」
「何者だ貴様」
「さあな。ただの通りすがりの陰陽師さ…!」
神社にいそうな黒髪の男性が手に紙を持って、かまえている。
「人間の小僧が…!」
「老兵は死して去れっていうよなあ。若作りのジイさんよ」
(え、あの人そんな年なの?そういえばさっき千年眠ってた。的なことをいってたかも)
「ぷくくっ!」
私はついわらってしまった。
「さあ封印といくか…」
「holdup!」
ピストルの音が一発。
銀髪の青年が、にこやかに歩いてくる。
「その化け物は、エクソシストの私が狩りましょう」
「は?エクソシストは悪魔を駆ってろよ」
「君たちは陰陽師、ならば鬼退治ではなく占いでもなさってはどうです」
「あ?お前は桃太郎か?」
「いつまでやるんだろ…」
いつの間にか紫髪の鬼は消えていた。
「なんだったんだろ……」
昨日、というか一睡もしていないので今日。
鬼があらわれて陰陽師やエクソシストまであらわれて、わけがわからないことだらけだ。
「俺はクッキーがいい」
「玉露はないんですか?」
「ねーよ!」
ちゃっかり馴染んでるし。
「で、お前たちが何しにきたか、まだ聞いていないが」
「何しにって、化物の気配を感じたから退治しにきただけです」
「というか、俺をエクソシスト野郎と一括りにするのはやめろ」
なんか火花散らしてるし。