第1章
序章
(苦しい・・・)
体が自由にうごかない。
(怖い・・・)
突然暗い谷底に突き落とされたかのような感覚に囚われた。
(苦しい・・・肺になにかが詰まっているようだ・・・)
僕は思わず泣く。すると不思議と肺に酸素が流れてきて、体内を巡るのがわかった。母さんが自分を抱き抱える。近くにいる女性が母さんに言う。
「おめでとうございます!元気な男の子です。」
「生まれてきてくれてありがとうねリョウ。」
(ああそうか。自分は生まれたばかりの赤子なのだ。道理で声の出し方もわからず、力も入らないわけだ。当たり前じゃないか。)
ぼやける母の後ろのカレンダーを見て何気なく「明日は日曜日なのか。」と、そう心の中でつぶやく。
そこで初めて自分の思考が赤子らしくないと、違和感を覚えたのであった。
僕が生まれてからしばらくの月日が過ぎた。
「 皆さんも知っている通り、古来より多くの生物は、自分たちの理想に近づくため進化を重ねてきました。ある時は楽に獲物を仕留められるように。ある時は厳しい環境で生き抜けるように。そして今も人間は・・・」
「リョウ〜もう寝なさい。もう9時よ。」
やっと幼稚園から帰ってきて教育テレビを見ているというのに、また母に邪魔をされてしまった。まあここは子供らしく早く寝た方が成長に置いても良いのだろう。僕ははーいと返事をし、大人しく寝室へ戻ることにした。
第1章
近年、世界中で新たに確認されるようになった現象。それが人類の「進化」である。
もちろん以前から人間は少しずつ進化してきたし、超人と呼ばれる人間離れした人や、変異をおこした人も数える程にはいた。
しかしここ十数年間で、今までにない特徴を持った人間が1000人に1人ほど。特に日本人やモンゴル人等の黄色人種に多く見られ始めたのである。
「進化」と聞くと一見良い事のように聞こえるが、その限りではない。
例えば進化する子の親が「翼が欲しい」という理想を持っていたとする。親の理想通り翼を得た子供は、果たしてしっかりと飛べるだろうか。人間社会でなんのトラブルもなく生活できるだろうか。翼に行く栄養分は?日常生活で不自由はないか?
他にも見たもの全てを記憶する人は精神が崩壊してしまったり、耳が異常に良い人は鼓膜の弱さで結果ろう者になってしまったり。はたまた研究者に解剖されただの迫害をうけただなんて話もある。
「退化」だって一つの「進化」だ。今では片腕がない。なんて人も「進化した人」。巷では「NEO」なんて呼ばれている。
なぜ僕がここまで「進化」について知っているのかと言うと、僕もまた「NEO」だからである。
だが、僕は自分自身がネオだということは誰にも言っていない。
僕は生まれてからすぐに自我や言葉や物の概念があった。高校生程度の問題なら理解出来ていたのだ(後にわかったことだが)。
しかし産まれてすぐの僕は考えた。「もしも僕が生まれてから何日かで立ち上がり、日本語を流暢に話し、数学の問題を解いたらどうなるだろうか。」と。
良い方向に転べば、テレビ出演、エリート校、良い職業など、人生の大きな助けとなるだろう。
しかしそれには多くの人々からの嫉妬、異端を見る目、研究者達の興味などを全てかわしていく必要がある。
そう思い、密かに自分の知識がどこから来たのか、「進化」について、探ることにしたのだった。
今回は説明になってしまったのでこれからどんどん物語を進めたいです




