表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/100

[第89話] ボリボリ…

 弥川やがわ憲司はかゆさに我慢できず、ボリボリ…と、思わず首筋をむしった。ホームレスには決して成りたくてなった訳ではなかったが、成ってしまったものは仕方がない…とオウンゴールのように甘受かんじゅしていた。

 今朝も早くから、空き缶を拾ってリサイクル業者に持っていった。

「アンタも、よくやるね…」

 なぐさめともつかない言葉を顔馴染みの須崎にかけられ、弥川は意味のない笑いを無言で返した。

「今日は、450円だね。正確には448円だけど、ははは…端数は私からの寄付ということでね」

「須崎さん、いつも、すいませんねぇ」

 軽くお辞儀をしてボリボリと首筋を掻き、弥川は須崎から手間賃を受け取った。まあ、これだけあれば、三日分を合わせて1,500円ほどにはなる。だいたい三日が相場で、換金してはわずかな食料を買い、飢えをしのぐサイクルを繰り返していた。ボリボリ…と掻き、その日も一日が終わるのが相場だった。銭湯へはここ2年ばかり御無沙汰していたから、時折り、首筋を掻きながらそのときの湯舟の心地よさを弥川は思い出した。身体はもっぱら公設トイレ、デパートとかで洗ってはき、済ませていた。それでも、ダンボールの古さからか、やはり眠っているとボリボリ…となった。

 そんな弥川に転機が訪れたのは、ひょんなきっかけだった。拾った宝くじが馬鹿当たりしていたのだ。弥川は過去、空き缶を拾っていたとき、偶然、宝くじ券数枚を拾ったのである。まだ新しかったせいもあり、それを交番へ届けておいたのだが、遺失物の届けがなく、時の経過で弥川のものとなったのである。その券が当たっていた。その換金額、実に前後賞を合わせ数億円だった。

 入った金が災いした訳ではなかったが、弥川はホームレスを辞めざるを得なくなった。とはいえ、これといった金の使い道もなく、弥川は金を金融機関へ預けておいた。ところがである。人生は奇なるもので、偶然出会った男にアドバイスされ、小さな店を開店した。運よくそれが、また馬鹿当たりした。瞬く間に弥川は会社の社長となり、社長席に偉そうな口髭くちひげたくわえ、座っていた。ただ、弥川は相変わらずボリボリ…と首筋を掻いていた。


              THE END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ