[第70話] ホッコリ
久しぶりに仕事が早く上がり、滝山正は美味いツマミを味わいながら軽く一杯やっていた。たまに飲む酒である。酔いが、いっきに襲い、滝山をホッコリとさせた。世に言う、ほろ酔い寛ぎ気分である。滝山が久しく忘れていた気分だった。滝山の場合、これが、いけなかった。忘れたままならよかったのだが、思い出してしまったのである。滝山はそれ以降、仕事が終わるとこのホッコリ気分が味わいたくなっていった。そして、それが重なり、病みつきになった。人生はどこでどう転ぶか分からない。仕事がおろそかになり、滝山は貧乏になった。転んだ訳である。こうなれば、ホッコリ相場の話ではなくなる。滝山は仕方なく、また仕事に精を出し始めた。すると、ホッコリとし、仕事に張り合いが生まれた。滝山はまた金が貯まり出した。起きた訳である。久しぶりに仕事が早く上がり、滝山正は美味いツマミを味わいながら軽く一杯やっていた。たまに飲む酒である。酔いが、いっきに襲い、滝山をほっこりとさせた。これは過去にあったパターンだぞ…と滝山は思った。ホッコリは、いけないいけない…と滝山はホッコリ気分を慎んだ。
THE END




