[第69話] 大きなお世話
困ってもいない人に出しゃばれば、大きなお世話となる。さらにそれが高じると、もう迷惑以外の何ものでもなくなり相手を怒らすことにもなりかねない。
牛窪和馬は買物をしていた。もうないか…と買い忘れを確認し、牛窪はレジへ回った。レジに並ぶ人が少ない列を選んだ牛窪は前の人が支払い終わるのを待った。前の人は老婆だった。レジ係はその老婆には何も言わず、牛窪には「お持ちしましょう」と、勝手に運び始めた。牛窪は少し腹が立ったが、そこは抑えて腹に収めるとレジ係の女性に言った。
「いえ、結構です。戻して下さい」
腹は立っていたが、荒げず穏やかに言い返した。レジ係は元へ戻した。支払い終え、牛窪は店のトイレへ入り、はたと考えた。そのレジ係の何がそう言わせたのか、についてである。一見すれば、自分はまだ老い耄れていないぞ! という確信が牛窪にはあった。外見もまだお年寄りには見えないだろう…と分析した。では、なぜ? である。店が指導する接遇に問題があるのではないか? と考えてみた。困っている人のみを対象にすれば、ことは足りるのだ。その指導が徹底されていないのではないか…と考えた。まあ、そんなとこだろう…と分析を終え、牛窪はトイレを出ようとした。考えながら用を足していた牛窪は、トイレットぺーパーの先をいつの間にか折っていた。次の人が使いやすい…という単純な潜在意識がそうさせていた。次の人には大きなお世話だった。
THE END




