[第67話] あからさま
船路灯輝は風変わりな老人画家として世に知られていた。彼は思ったことをズバッ1 とあからさまに言う性格だった。ズバッ! と言う・・とは、単刀直入の直球で語るということだ。インタビューが、この性格から中断されたことは幾度もあった。
「え~~、受賞されたご感想は?」
「ははは…下さるんなら、いただきましょう・・ってとこですかな。それより、アンタのネクタイ似合ってないよっ」
「えっ? …大きなお世話ですよ!」
今日も、取材が中断された。旋毛を完全に曲げた取材記者をアレコレとカメラマンが慰めた。
「やめやめっ!」
取材記者の怒りは鎮まらず、先に帰ってしまった。カメラマンは、ペコリ! と船路にお辞儀すると部屋を出ていった。
「ふんっ! 世話の焼ける奴だ。初めから来なきゃいいじゃないかっ!」
船路はそう吐き捨てると、またキャンパスに向かい、色を塗りたくった。
そんな船路が国営放送に討論会に特別ゲストとして登場した。制作サイドの思惑は、建前で語る論客に飽きがきたからだった。アナウンサーの沈着かつ冷静な質問に対し、船路の強烈であからさまな発言が飛び出した。
「はははは…。あなたはお仕事ですから、あなたに、とやかく言うつもりは毛頭ございませんが、私に言わせりゃ、この討論会は茶番劇ですな。いや、失礼…」
「と、申されますと?」
「与野党とも、しっかりしたことを言っておられる。よく聞いておれば双方とも間違っておらないように聞こえる。ははは…実は、双方とも、少し間違っておるということですかな」
「例えば?」
MCの解説委員が訊ねた。
「細かく言いますと、枚挙に暇がない。あからさまに言えば、まあ、皆さん、テレビ目線の立場で語っておられる。これが居酒屋かなんかで、一杯ひっかけながら美味いツマミを味わい、赤ら顔で語ってみなさいな。あからさまで、返って上手い具合に。ははは…そうはいかないでしょうがな。では私はこれで。仕事がありますのでな。あっ! どうぞ、立て前をお続け下さい」
テレビ中継の途中にもかかわらず、船路はスタジオから退席した。その後、憤慨して誰も発言する者はいなくなり、中継画面は途絶えた。
[番組の途中ですが、予定を変更いたします]
音楽が流れ、テレビ画面にはテストパターンと字幕が映し出された。テストパターンだけが、あからさまだった。
THE END




