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[第64話] 停止

 緑畑みどりはた耕治は久しぶりに歩くことにした。子供の頃、小学校の遠足でそのルートを歩いた記憶はあったが、断片的に思い出すだけで、ほとんど忘れていた。

 上手うまい具合に晴れ渡った日の朝、緑畑はリュックに必需品を入れて出発した。登山が趣味の緑畑は、当然のことながら万が一の場合の対処法は心得ていた。

 最初はよく知った景色だったからスムースに進めた。ところが、ほぼ3分の1ほどの道のリにさしかかったとき、道は歩いてきた太い道とやや細い道のふた手に分岐していた。緑畑はおやっ? と首をかしげ停止した。一本道だった記憶にある風景と違ったのである。細い道は最近、出来たんだろう…と思え、緑畑は歩いてきた太い道をふたたび歩き出した。よく考えれば、この前とはいえ子供の頃のことなのだ。当然、あたりの様子も変わっている…とも思え、緑畑は思わず苦笑した。磁石[コンパス]を見れば進んでいる方向に間違いはなく、地図上の道も正しいと思えた。

 それからまた、しばらく歩き、昼食予定のほこらを探したが、いっこうにその姿が見えない。道は進んできた太い道と細道のふた手に、また岐していた。このとき緑畑は、停止しておかしい…と思った。腕を見ればすでに昼前である。取りえず分岐した今までどおりの太い道を進んだが、なにも現れない。もう祠が現れてもいいはずだった。腹もいてきていた。まあ、いいや…と、緑畑は停止した近くの適当な草原くさはらに腰を下ろし、作ってきた昼食を食べることにした。

 腹も満たされた緑畑は、どういう訳か眠たくなった。初めはなんとか我慢していたが、我慢しきれなくなった緑畑は、いつの間にかウトウトと眠りに落ちていた。

 ふと気づけば、1時過ぎだった。あわてて緑畑は立つと歩き出した。そのとき、緑畑はふたたび、おや? と思い、停止した。遠くではあるが眼前に自分の家が見えるではないか。そんな馬鹿なはずがない…と緑畑は目を指でこすった。だが、それはまぎれもなく我が家だった。緑畑は停止結果、ルートを一周していたのである。停止せず、そのまま突き進めばよかったのだ。緑畑は停止するんじゃなかった…と後悔こうかいした。


                    THE END

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