表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/100

[第55話] 遺失物

 交番へ駆け込んだ男は、妙な遺失物を取り出すと若い巡査の前へ置いた。

「なんですか? これは…」

 若い巡査は妙な遺失物を手にすると、怪訝けげんな面持ちで右から左から・・上から下からと見回した。

「いや~、それは私にも分からんのですがね。一応、お届けしようと思って…」

 その遺失物は、外見上は小型の電気機器に見えたが、現在、市場しじょうに出回っているものとは異質の、精巧な機器のように見えた。

「どうかしたか?」

 先輩と思われる初老の巡査が現れた。

「いえね…これ」

 若い巡査は初老の巡査に遺失物を手渡した。

「なんだ、これは?」

 初老の巡査も見たことがないだけに、あんぐりした顔で妙な遺失物を見回した。

「届けがあったんですから、遺失物ですよね?」

「そら、そうなるだろう。人が使うもので道に落ちていたんならそうだろう。そうだろ?」

 今一、自信なさげに、初老の巡査は逆にたずねた。

「はあ…まあ、そうなんでしょうか?」

「あの、もう帰っていいですか?」

「いや、ちょっと待って下さい! 拾得物件預り書を書いていただきます…」

「そんなもの、結構ですよ。拾って届けただけですから…。いらない、いらない!」

 駆け込んだ男は迷惑そうな顔をした。

「いや、そう言われましても、一応、規則ですから…」

「私ゃ、急いでるんだっ! 国民を守る警察が国民を困らせて、どうするんですっ!」

 立場が逆転し、男は二人の巡査を説諭せつゆした。

「いや、それはそうなんですが、私らも困りますんで…。オタクのご要望どおりですと、権利放棄となりますが、その場合でも、こちらに書いていただいて…」

「どうしてもですか?」

「はい、どうしてもです。遺失物法施行規則第3条で提出した物件を放棄する旨の申告があったときは、拾得物件控書の権利放棄の申告の欄に提出者の署名を求めるものとする・・と、ありまして」

「わっ!! すごいですねっ、先輩!」

 若い巡査が感嘆かんたんの声をらした。

「ははは…試験はダメだったが、これでも巡査部長だ、私は」

「でしたね。次は警部補試験、受かりますよ、きっと」

 どうでもいいから早くしてくれ! と男は思った。

「それにしても…なんでしょうな?」

 初老の巡査は届けた男に振った。 

「さぁ~」

 男は、俺にいてどうするんだ、と思ったが、話を合わせた。三人は妙な遺失物をシゲシゲと見ながら首をかしげた。その遺失物は異星人がうっかりUFOから落としたものだった。


                    THE END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ