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[第51話] 退屈

 テレビがにぎやかにうなっている。何をしても盛り上がらない堀崎沙希枝は、動くのをあきらめ、ひとりアングリとした顔でテレビを観ながら煎餅をかじっていた。もちろん、畳の上へ寝転がった姿勢で、である。これは誰が見ても、典型的なオバチャンが退屈している姿勢に思えた。沙希枝自身もそれは自覚しているのだが、取りたてて気には留めていなかった。旦那の堀崎は別に何も言わず、そんな沙希枝と日々、暮らしていた。沙希枝の内心は、私はまだ若いんだから…そうそう! 買い置きがなかったわね、煎餅せんべいを買ってこなくっちゃ…くらいの浮いた気分だった。

「堀崎さん、別にどこもお悪くありません。…あの、こんなことを言っちゃなんなんですがね。お悪くはないんですが、少しダイエットされた方がよかないですか? ははは…太った私が言うのも、なんなんですが」

 体重がゆうに100㎏は超える・・と思える医者の皮平(かわひら)は、検診結果の書類を見ながら退屈そうに欠伸あくびをしながらニヤリと言った。沙希枝は、そうよっ! アンタには言われたくないわっ! と内心で怒れたが、さすがにそれは言えず、思うにとどめた。

「はい! 少し、頑張りますわ」

 沙希枝は一応、そう言って、愛想笑いした。

病院の帰り道、よくよく考えれば、もうそんな年なんだわ…と沙希枝は少し反省した。沙希枝は今年で五十路(いそじ)に入っていたのだった。退屈しのぎに寄ったス―パ―に美味そうなメロ[銀ムツ]の切り身パックがあった。いつもは4きれパックを買うのだが、2きれパックにした。ご飯が進んで、1きれで3膳以上、食べてしまうことは百も承知だったからだ。余ったお金で退屈しのぎに煎餅を4袋買った。いつもは2袋だった。退屈が沙希枝を太らせていたのだ。


                    THE END

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