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[第48話] 共生

 生物には寄生と共生がある。もちろん、どちらにも属さずに生きる生物もいる。だが、広い意味で、生物は単独では生きられない。目には見えない形で、他の生物の何らかの恩恵に浴して生きているのである。このことを忘れると、この男、池飼いけがい鮒夫ふなおのようなことになってしまう。

「はい! 時間1,500円を頂戴しとります…。はい! 追加料金は30分で500円ですが…はい! もちろん、道具レンタル料はサービスさせていただいております。はい! コミということで…はい! どうぞ、ご贔屓ひいきに。お待ち申しております」

 朝から問い合わせの電話がかかってきて、応対した池飼は、ほっとして電話を切った。店の規模を少し大きくしてから、この手の電話が頻繁ひんぱんにかかるようになり池飼は少し疲れ気味だった。だが今日からは、新しい従業員を3名、やとったから楽が出来る…と思えば疲れも取れた。事実、その日から池飼は楽になった。苦労してここまで店を大きくしたんだから、当然のことだ…と池飼は考えた。すべては俺のすぐれた経営力だ…とも思った。

 五年が経ち、店は大いに繁盛していた。それにともない、利益も当然ながら増えた。

「あの…もう少し、頂戴できないですかね」

 月極つきぎめの給料日、一人の従業員が遠慮ぎみにそう言った。三人に給料袋と明細を渡したあとだった。明細には¥122,400の給料額が印字されていた。現金支払いにこだわる池飼は、時代おくれながらキャッシュで紙幣と貨幣を袋渡ししていた。

「嫌なら、辞めてもらって結構だ!」

 苦労人、池飼の上手じょうずの手から水がこぼれた。池飼の心はゆるんでいた。自分の力を過信するようになっていたのだ。従業員など、また雇えばいい…と無意識で思った心が、そう言わせていた。

「そうですか…。それじゃ、今月いっぱいで。長い間、お世話になりました」

 ペコリと頭を下げたのは一人だけではなかった。翌月、三人が辞めた池飼釣堀店は営業できなくなり、店を閉ざした。池飼と三人の従業員は共生関係だったのである。池飼は、すっかりそのことを忘れていた。

「よろしく、お願いします!」

「ああ、そんなには出せんが、まあ頑張ってくれ!」

「はいっ!」

  半年後、池飼は辞めた三人が立ち上げた店で従業員として働いていた。


                   THE END

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