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[第44話] 感性

 人は同じ内容でも受け取り方が違う。相手の言葉をどうとらえるか・・は、その人の感性で変化するということだ。

 岡崎省吾は、今日も録画した女子W杯に釘づけになっていた。

「よしっ!」

 弥間耶みまやの強烈なシュートが相手ゴールのネットを揺らした瞬間、岡崎は雄叫おたけびを上げていた。感性の爆発である。それをめた目で見つめていたのは、今年で8才になる息子の省太だった。省太の感性は、サッカーファンを自認する両親と歩調を合わせる程度のもので、熱狂するというたぐいではなかった。要するに、両親のご機嫌をうかがい、適当にワァーワァー賑やかにするというものだ。岡崎や妻の聡子としこの感性が100%とすれば、省太のそれは30%にも満たなかった。それでも妙なもので、応援しているうちに省太の感性も高まっていった。

「こちらもエース・ストライカーが欲しいよなっ!」

「ええ、カムバックみたいのがねっ!」

 初戦を1-0でものにしたことで、両親の談義は熱を帯びていた。カムバックは優勝候補の一角を占める某国の得点王であり、カウンター攻撃の決定力には岡崎といえども一目いちもく置いていた。

「メッシュはどうなの?」

 省太がポツリと口を挟んだ。

「省、それは男子だ…」

 岡崎が、にこやかな顔で解説した。何はともあれ、岡崎としてはサッカーが話題ならご機嫌だった。省太の方はといえば、『え~、一席、ご機嫌を伺わせていただきます…』的なくらいである。両者の間には、明らかに感性の違いがあった。

「出来たわよっ!」

 台所に立った聡子が声を少し大きくしてテレビの前の二人に言った。

「は~い!」「は~い!」

 美味うまそうなカレーうどんのにおいがした。聡子が作るカレーうどんはプロ風で好評だった。この味覚に関して、二人の感性は100%で同じだった。


                   THE END

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