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[第38話] 梅雨(つゆ)

 旦那のさとしは妻のしのぶに愚痴られ続け、えていた。少し気分をやわらげようとテレビをつけると、天気予報をやっていた。

「気象庁は◎◎地方が梅雨に入ったと見られる、と発表しました」

 聡は、そうなのか…と、思った。ふと、窓を見ると、空は薄墨色の雲でおおわれている。聡は改めて、そうなんだ…と実感した。

「梅雨なんだな…」

 忍に言うでなくつぶやくと、忍もうつろな顔で空を見た。

「そうみたいね…」

 珍しく愚痴られず、聡はこれはいいぞ…と思った。空は曇っていたが降り出す様子もなく、小康状態を保っていた。聡は今の俺達みたいだな…と二人の夫婦関係を思った。

 一週間が過ぎ去り、聡はまた忍に愚痴られていた。少し以前より愚痴られ方が強くなったようで、聡も少し怒れたから、ふたことみ言、言い返していた。聡は少し気分を和らげようと、テレビをつけた。

「寒冷前線は以前より、やや北へ押し上げられています…」

 聡は、そうなのか…と、思った。ふと、窓を見ると、薄墨色の空で、幾らかしっぽかった。聡は改めて、そうなんだ…と実感した。

「梅雨は蒸すな…」

 忍に言うでなくつぶやくと、忍はチラッと空を見た。

「そらそうよ!」

 言い方がけわしくなっていて、聡はこれはいけないぞ…と思った。外はジトジトと降り出していた。

 そしてまた一週間が過ぎ去った。聡は相変わらず愚痴られ、同じだけ愚痴り返していた。完全な軽い喧嘩けんかだった。外は梅雨末期の土砂降りになってった。聡は少し気分を和らげようと、テレビをつけた。

「各地で梅雨末期の豪雨となっております。今後の気象情報には充分、ご注意下さい」

 聡は、注意しないとな…と、思った。そして無言で忍を見た。二人は数日、口をきいていなかった。

 そしてまた一週間が過ぎ去り、ついに梅雨が明けた。外はすっかり晴れ渡り、夏の熱気が部屋へと入ってきた。聡はテレビをつけた。

「◎◎地方の梅雨は明けたようだと気象庁は発表しました」

 聡は、そうなのか…と、思った。

「おい、梅雨が明けたそうだ…」

 忍に言うでなく呟くと、忍は明るい顔で空を見た。

「そうね…」

 言い方は柔和にゅうわで、顔には笑みがこぼれていた。 


                   THE END

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