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[第36話] ポンポコポン!

 中秋の名月が猪野毛いのげの森を照らしている。猪野毛の森は、小高い牡丹ぼたん山の山裾やますそに広がる鬱蒼うっそうとした森だった。この森には昔から住まうたぬきのポンポコ一家がねぐらを構えていた。

 枯尾花すすきが風にそよぎ、名月が煌々(こうこう)と蒼白く輝くなか、ポンポコ一家の父子狸が月をでていた。

『とうちゃん、いい月夜だね』

『ああ…人は悪くなったが、お月さまは変わらんなぁ~』

 そこへ現れたのが、母狸だった。

『なに言ってるのよ。あんただって悪くなったじゃない。この前、お芋、一本、少なかったわよっ!』

 ポンポコ狸の父は、四本あったお芋の一本を、こっそり腹へ納めたのだった。まあ、それでも一家の分は、それぞれ一本はある・・というシラコい目論見もくろみである。母狸は、父狸のそのシラコさを完璧かんぺきに見抜いていた。言われた父狸は子狸の手前、認める訳にもいかず、バツ悪く腹鼓はらづつみをポンポコポン! と打った。静かな森に父狸の腹鼓が響き渡った。

『なによっ!』

 誤魔化すのっ!? とでも言いたげに、母狸もポンポコポン! と打ち返した。二匹は、しばらく腹鼓を打ち合った。

『いい音色だね…』

 二匹の腹鼓を聞いていた子狸も、そう言うと腹鼓を打ち始めた。名月の猪野毛の森にポンポコ一家の腹鼓がいい音色で響き渡った。


                   THE END

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