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[第34話] 記憶

 人の記憶ほど曖昧あいまいなものはない。

「いや、いやいやいや…確かに、もう一切れあった!」

 横川家では、朝から残っていた一切れの銀ムツの味噌焼きを巡り、口喧嘩くちげんか勃発ぼっぱつしていた。横川渡×妻、江美による壮絶な口バトルである。

「何、言ってるのよっ! 昨日の夕飯に食べたでしょっ!」

「馬鹿なっ! それは先週の話だろうがっ!」

「またまたっ! 昨日よ?! もう、忘れたのっ!」

「そうだ、昨日だっ! 忘れるかっ!」

 猫のタマは、偉いことになったぞ…と二人の声に驚き、フロアから飛び起きると、スタスタ、奥の間へトンズラを決め込んだ。

「あなたの記憶違いよっ!」

「そんなことあるかっ! 俺の記憶は確かだっ!」

 ついに争点は記憶の信憑性しんぴょうせいが問題となってきた。

「じゃあ、言わせてもらうけど、昨日のオカズは何だった?」

 江美は完全な不信感をあらわにした。

「オカズ?! オカズは、海老フライ・・笹かまぼこの板わさ・・それに…じゃないかっ!」

「ほら! それに、なに? 味噌焼きがあるじゃないっ!?」

「んっ? …いや、いやいやいや、味噌焼きはなかったっ! なかった! …なかったはずだ」

「あったわよぉ~!」

「そうだったか? …」

 横川の声は次第に小さくなった。このとき、横川は江美の言葉でおやっ? と自問自答していた。そうだ、食べたかっ? 食べたな…と。だが、一家のあるじとしては、急に退却するのも不甲斐ふがいない。加えて、男のメンツもあった。横川は記憶違いを内心で実感したあと、何かいい手立てはないか…と探った。

「あっ! いけない、いけないっ! 平田に電話しないとっ!」

 横川はタマと同じく、自室へトンズラを決め込んだ。


                   THE END

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