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[第32話] 欠陥商品

 日曜の朝、坂山努は楽しみにしていた電気街への買い出しに出かけた。つまらない物や不必要な小物も含み、いろいろ珍しい商品を買って帰るのがなによりの坂山だった。

 この日は快晴で暑くなく、湿度も低いという具合で、ブラつくには最適の気候だった。坂山は、いつものようにウロウロと見て歩き、ふと一軒の店に入った。少し奥に珍しい電気製品が置かれていたからである。

「あの…これ?」

 坂山は店主と思われる男に声をかけた。

「はい…ああ、コレですかな。コレは売りものじゃないんでございますよ、はい! 欠陥商品なんでございますがね、実は。なんかデザインが気に入りましてな、ははは…私の身勝手で置いているだけなんでございますよ」

 店主は坂山に物腰低く説明した。だが、坂山はなぜか、その小物商品が気に入ってしまった。

「お支払いしますから、私が買わせていただく訳には?」

「えっ! コレを、でございますか? コレは…」

 店主はニヤけて困り顔をした。

「ぜひ、お願いします!」

「…と、言われましてもねぇ~。値段のつけようがねぇ~…欠陥商品ですからねぇ~」

 店主は[ねぇ~攻勢]で坂山の意思をごうとした。買い取りをはばむ、いわばサッカーでやるところのプレス風である。だが、坂山もこの街の一見いちげん客ではない。いわば時代劇で演じられるところのウロつき流・免許皆伝のつかい手だから、そう簡単には引き下がらなかった。

「いや、いやいやいや…だからご主人のいい値で結構ですから」

 大相撲で言うところの下手投げ風である。

「さよ、ですか? …しかし、こんなもの、何にお使いになるんです?」

「いや、まあ…。いろいろと」

 坂山は適当ににごした。いわば国会で見られるところの政府答弁風である。

「いいでょ! 私も、この道30年の電気屋だっ! ただで結構ざんす! 持ってって下さい!」

 主人は、いわば卸市場で値づけられるところの落札風に、きっぷよく言った。坂山はその欠陥商品の入った小袋を肩にかけ、店を出た。いわば大黒様の♪大きな袋を肩にかけ~♪と歌われるところの唱歌風だった。


                   THE END

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