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[第27話] チキンレース

 地球の命運をかけたチキンレースが両者の間で繰り広げられていた。その両者は、現実には存在しない二つの壮大な意識だった。両者の競い合いは、有史以前から始まり、恐らくは未来も続くだろうと思えた。両者とは、人間が対立を意識して対峙させる黒と白というのではなく、天と地という意識でもなかった。人智の及ばない壮大なチキンレースの一つは今朝も、咲川家でさっそく始まっていた。

「ここに置いたジュース、知らないか?」

「なに言ってるのよ。昨日きのう、飲んじゃったじゃない!」

「…そうだったか? おかしいな?」

 咲川は妻の美奈にそう言って、首をかしげた。普通に考えれば、物忘れによる単純な勘違い・・である。だがその裏には、壮大な地球規模の意識と意識がぶつかり合うチキンレースが秘められていたのである。

 意識αは意識βの目論見もくろみを阻止させるべく、咲川に物忘れをさせる・・という新手あらてに打って出た。意識βもお馬鹿ではない。そんな思惑はすでに読み切っていて、しまった! 先を越されたか…と、くやしがった。そして次の返し技のチャンスを必死にさぐった。

 その両者のレースを厳粛げんしゅくに見定める目に見えない力がもうひとつ存在した。意識を超越した崇高すうこうな真理∞である。その真理∞により宇宙は動かされている・・といっても過言ではなかった。それは、壮大とかの尺度しゃくどを超越する絶対的な無限の力だった。真理∞は、冷めた目で意識αと意識βのチキンレースをながめておられた。真理∞は、咲川の物忘れを哀れにお思いになり、ここはひとつ、なんとかしてやろうか…とお考えになった。よくよく考えれば、チキンレースにあたいしない馬鹿馬鹿しいレースである…とも思われた。

 咲川家の居間に一陣の風が吹き抜けた。

「ああ、そうだそうだ! そうだったな!」

 急に思い出したのか、咲川が叫ぶように言った。

「そうでしょ!」

 美奈がすぐに‎返した。

『…』『…』

 意識αと意識βによる咲川家でのチキンレースは、この瞬間、頓挫とんざした。両者は、なんだ、やめようか…と咲川家からソソクサと撤収てっしゅうした。


                    THE END

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