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[第17話] 努力

 板蒲鉾(いたかまぼこ)は今場所、横綱を破り晴れて優勝した・・という夢を見た。ハッ! と目が覚めると、自分は十両だった。なんだ…と思ったが、よくよく考えれば、少し厚かましい夢にも思えた。親方からは努力はしているが、相撲が今一・・と言われている。こればっかりは努力だけでは駄目なのか…と最近、思うようになった。幸い、生来の頑丈(がんじょう)な身体で、怪我だけはしたことがなかった。ただ、幕内寸前まで番付が上がると、翌場所はまた下がる・・といった塩梅(あんばい)で、サッパリだった。まだまだやれる…と思っているうちに、いつの間にか50半(なか)ばを越えていた。アラフォ~どころかアラファ~~である。だが、どういう訳か板蒲鉾自身、体力の衰えが感じられない。これでは、そろそろなあ…と親方は言えない。当の本人が至ってやる気十分・・ということもあった。マスコミや相撲界では別の意味で板蒲鉾の四股名(しこな)は有名になっていった。なんといっても、この年齢の現役力士は相撲界の歴史に存在しないからだった。

「ははは…努力するだけです」

 たまにマスコミからの取材があったとき、板蒲鉾は決まってこう言った。そうこうするうちに、奇跡が起こった。サイクルからすれぱ、今場所は負け越しのはずだ…と思っていた板蒲鉾は、初日からアレヨアレヨと勝ち進み、気づけば十両優勝していたのである。板蒲鉾は場所が終わったとき、夢に違いない…と思った。しかし、それは現実だった。

「ははは…そんなに美味(おいし)いですか? 努力しただけです」

「いやいや、なかなかの努力味です」

 努力はついに報(むく)われたのだ。ふだん、食卓で食べられる安ものの板蒲鉾は正月用の高級食材、鯛蒲鉾に変身していた。


                  THE END

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