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[第14話] どうでもいいじゃないですか

 事あるごとに、どうでもいいじゃないですか、と言うのが、大学院教授、野呂間のろ等の口癖だった。無責任という訳でもなく、そうかといって怠堕たいだ、事なかれ主義という風でもない静かな男だった。家族や世間の者はこの男のおかげで物事がスンナリと運び、何かにつけ助われていた。というのも、討論は申すに及ばず、相談や了解を得るために話しかければ、どうでもいいじゃないですか…と返ってくるからだ。それを聞いた者は野呂から間接的に暗黙の了解を得たことになる。万事が万事、この調子だったから、マスコミや人はいつしか野呂を手頃な教授としてよく利用するようになった。野呂は頼まれれば、どうでもいいじゃないですか…と一応、断ったが、最終的には、すべて了解した。結果、出席した総会などで意見を求められれば、「どうでもいいじゃないですか…」と野呂は発言したから、反対した者も一歩いっぽ引かざるを得なくなり、スンナリと議論はまとまったのである。

 あるとき、そんな野呂が出版社から執筆を依頼された。出版社の注文で、野呂の人生観という内容の原稿依頼だった。当然、野呂は、どうでもいいじゃないですか…と、一端は断ったが、最終的には了解し、執筆を始めた。野呂とすれば、世の中のすべての細々(こまごま)としたことは、どうでもいい…と映っていたから、それらの諸事について、どうでもいいじゃないですか…と結論づけ、末尾に、皆さんは、どう思われますか? と読者に疑問を投げかけ、校了した。出版本は、たちまちベストセラーとなり、馬鹿売れとなった。今年の流行語大賞にも選ばれ、国会でも、そんな些細ささいなことは、どうでもいいじゃないですか…という答弁として多用された。本来、こんな答弁をすれば、やり玉に上がり、議員身分にもかかわるのだが、流行語として、いいかくみのに利用する者であふれた。野呂教授の名声は、国内は申すに及ばず、一躍いちやく、世界にとどろくこととなった。いつしか、世界各地の紛争は下火したびになっていった。


                     THE END

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