表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/100

[第13話] 植えますとも!

 協定などというものは、平穏な世界事情が保たれている上で成立するのだということを、ここ数年の情勢変化によって麦無むぎなしは身を持って知らされることになった。世界の情勢が安定している頃はよかった…と、麦無は、しみじみ思うのである。

 世界に食糧危機が起きたのは、気象の激変により地球が急激に高温化したことによるものだった。この原因は人為的な温室効果ガスによるものではなく、天体的な周期で地球が繰り返す高温化によってである。当然、麦無が休耕地にした田畑で焼却した枯れ草の熱によるものではなかった。

 気象変化は各国の食糧ブロック経済体制を派生させることになった。どの国も自国民の防衛のため、食糧及び食料輸出を停止させたのである。関税がどうたらこうたら、どうのこうのと言っている場合ではない・・ということである。さあ! こうなれば、どうなるか。賢明な皆さんにはお分かりだろう。我が国にも必然的な食糧及び食料危機が起こったのである。過去のオイル・ショックによるトイレットぺーパーの売り切れ事態などとは比較にならないすさまじい食糧及び食料の争奪戦が人々によって起こされることになった。特に人口の密集した都会ではいちじるしく、食料品販売の関係店舗は暴徒に襲われ、打ち壊された。江戸時代の大塩平八郎の乱のようなものである。この事態が、都会の各地で頻発ひんぱつした。たちまち、政府は危機に立たされた。

「もしもし、麦無ですが…。はいっ! えっ!? 政府の… はいっ! はあ…はあ…」

 突然、麦無に政府高官から電話がかかってきた。休耕地に麦を植えてもらえないか・・という政府からの直接の依頼だった。

「はいっ! 植えますとも!」

 麦無は快諾かいだくした。かなりの収入が見込めることが、麦無の心を動かしたのだ。

「あの…それでですね、ご相談なんですが…お肉で支払ってもらえませんかね。私、今、美味おいしい焼肉が食いたいんですよ」

 話は細かな折衝せっしょうの末、まとまった。電話が切れたあと、麦無は財布の中に入った紙幣や貨幣をしみじみと見た。お金は、いくらあっても食べられない…と、無学の麦無は身をもって知らされたのである。

「植えますとも!」

 誰もいない部屋で、麦無は独りごちた。


                     THE END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ