表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/100

[第11話] 順調

 なにごとも、順調にいく・・としたものではない。明日から久しぶりに土曜、日曜と休めることになった塚平収一は、ウキウキ気分で過ごし方をアレコレと考えていた。まるで遠足に行く前の日の小学生だな…と一瞬、浮かんだ塚平は、すぐに反省するとゆるんだ顔を、引き締めた。それを見ていた妻の雅代は、おかしい人ね…という怪訝けげんな顔つきで取り入れた洗濯ものを畳みながら見ていた。塚平の発想では、まず朝一で軽いジョギングをし、朝食とする。こうすることで、美味おいしく朝食がいただける…という寸法だ。続いて朝食が済むと、楽しみにしていた模型のプラモデルをおもちゃ屋へ買いに行くことだった。で、当然、その後は買った模型の組み立て作業となる。塚平の目論見もくろみでは、まあ日曜もあることだから、明日の夕方までには作業は終わり、格好がつくだろう…というものだった。ところが、世の中そう甘くない・・と言えば少しオーバーだが、コトはとんでもないところで脱線してしまった。

 土曜の朝、塚平は紙にメモした計画どおり、コトを始めた。まず、軽いジョギングを・・と、塚平は勇んで家を飛び出した。そして、軽く走り込んで朝食となった。予想どおり、朝食は美味しく、塚平は、よしよし…とニンマリした。その顔を雅代は見ながら、最近、よく笑うわね、この人…と認知症を心配した。まあ、そんな些細ささいなことを気にする塚平ではない。

「ちょっと、出てくる!」

 いつも読む新聞にも手をつけず、塚平はおもちゃ屋を目ざした。

「気をつけてね…」

 何も聞かされていない雅代は、心配そうな顔で塚平を送りだした。まあ、この辺りまでは順調にコトは推移し、上々の出だしだった。

 おもちゃ屋に入ってすぐ、塚平は店の主人に言った。

「この前、ここにあったプラモデルなんですが…」

「ああ、アレね。アレは売れました…」

「売れた…」

 主人の言葉に塚平は唖然あぜんとした。だが、売れてしまったものは仕方がない。順調に進んでいた塚平の計画は、この瞬間、頓挫とんざした。前もって、『あの…コレ、取っておいて下さい。土曜に買いに来ますので…』と、欲しいと思ったあの日に注文するという保険をかけておけばよかったのだ。だが、今となってはあとの祭りである。大幅に今日、明日の計画を見直さねばならなかった。しかし、このままあきらめるのも…と塚平はくやしくなった。塚平は別のおもちゃ屋を目ざした。すると、神の御加護ごかごか仏の御手みてか、その何げなく入ったおもちゃ屋に欲しかったプラモデルが偶然ぐうぜん陳列ちんれつされていた。この瞬間、塚平の計画は順調さを取りもどした。塚平はそのプラモデルを急いで買うと、家へと一目散に走った。これが、いけなかった。塚平は転んで足を捻挫ねんざしてしまった。足を引きずり、ようやく家へと辿たどり着いた塚平は、『認知症じゃなく、よかったわ…』と微笑ほほえんで運転する雅代の車で病院へ行く破目となった。助手席に乗る塚平が思い描いたコトは、ふたたび順調にいかなくなったのである。

 治療を終え帰宅した塚平は、やれやれ…と諦めの溜め息をついた。そのとき、雅代が口を開いた。

「お医者さまがね、大事を取って二日ほど休みなさいって…」

 月曜も休めることになったのである。こうなれば、ゆっくりと計画を進めることが出来る。塚平の計画は、またまた順調さを取りもどした。


                    THE END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ