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[第100話] カラオケ

 村森静一は世に知られたサスペンス作家である。彼はカラオケが鳴ると、どんな作品でもスラスラと書き進められるという特異な才能に恵まれていた。

「先生、今日はこんなの持ってきました…」

 日々、村森の自宅へ日参するテレビ局の社員、岩竹がかばんからカラオケの古いテープを取り出した。CD時代の今どき、オープンリールのテープデッキでカラオケを聴くなどという者はごくわずかに思えた。その一人が、この有名作家の村森だった。

「ほお、どんなの…」

 岩竹は演奏曲が印刷された紙を村森に見せた。

「ふ~~ん…聴かない曲だねぇ」

「ええ、そりゃそうですよ。トウシロさんが作った世に出てない曲ですから」

「ああ、そうなんだ…。まあ、そこらに置いといてよ、聴いてみるから」

 村森は興味なさそうに言い捨てた。

「それで先生、今日の分は?」

「ああ、なんか言ってたねぇ…。なんだっけ?」

「嫌だなぁ~、忘れちゃったんですか? 10月放送分のヤツですよ」

「ああ、アレ。アレ、全然、出来てない!」

「ええ~~~っ! 参ったなあ~」

「何も君が参るこたぁないだろ?」

「いやあ~参りますよ、また怒られる」

「ああ、そうなの? いつまで?」

明日あすまでです…」

「明日か。ははは…そりゃ無理だな、無理無理!」

 村森は、無理無理! を強調して言い切った。

「無理にでもお願いします…。僕のリストラがかかってますから」

「ああ、まあ、頑張ってみるよ。ダメだろうけど、明日、また来なさいよ」

 青菜に塩の岩竹を見て、慰め口調で村森はそう言った。

 しんみりと岩竹が帰ったあと、村森は岩竹が置いていったテープをそれとなくデッキにセットし、スイッチをひねった。スピーカーから、なんとも心をそそるメロディが響いてきた。実に心を打つ曲の調べだった。その途端、村森にメラメラ…と創作意欲がいた。

 無心に書きなぐり、村森が気づくと、すでに外は明るくなり始めていた。して村森が眠る机の上には、岩竹が依頼した10月放送分の原稿が完成して置かれていた。デッキのテープはいつの間にか巻きもどされ、自動停止していた。


               THE END

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