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[第10話] 頃合い天気

 天界では一大不祥事が起こっていた。例年、進行する天気の巡行表が、何者かの不埒ふらちな行いにより持ち去られたのである。いわゆる、地上で世間一般に言うところの窃盗である。天界だけに悪事と言えば血生臭い事件は皆無だったが、時折り、このような天界で言うところの最大級の重大事件が勃発ぼっぱつしては天界人達を悩ませたのである。今回、起こった天気の巡航表窃盗事件により、天界は大混乱していた。月日で巡る天気の具合が定まらないのである。これでは、暑さ寒さの頃合いが地上へ気象として現わせない。

『弱りましたな…』

『そうですな。頃合いが分かりませんからな…』

 天界人達は、特命のつかいを極秘裏に決定し、窃盗犯を捉え、一刻も早く巡航表を取り戻すべく、ただちに任務につかせた。地上で言うところの特命 刑事デカである。この刑事は地上のテレビドラマ以上に格好よかった。というのも、姿を自由自在に消したり現したり出来る上に、死の心配がなかったから、武器は不必要だった。事件解決までには約ひと月を要した。そのため、4月というのに地上では真夏日や猛暑日が続出し、人々はあえいだ。とはいえ、事件がひと月で解決したのは、この刑事の俊敏な腕による。地上で言うところのミッション・インポッシブル

である。ともかく、天界での事件は解決を見て、天界は頃合いの天候を地上に示せるに至った。めでたし、めでたしである。

 余談ながら、この俊敏な特命の遣いは、天界でのポストが二階級アップしたという。


                     THE END

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