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[第1話] まあ、いいか…

 田所進は疲れていた。昨日は昨日で疲れていたが、今日も今一、シックリしなかった。体調が悪い訳でもなく至って元気な田所だった。それが、ひょんなことで多忙となり、今では疲労が取れなくなるまで深刻な状態だった。会社に酷使されている訳でもなく、その多忙感は田所のメンタル的なものだったのだが、彼自身にはそう思えず、溌剌はつらつと勤務する他の者がうらめしく思えたりもした。そうはいっても、どうなるものでもない。結局、一人暮らしの生活は、諸事を割愛かつあいする形に変化させざるを得なくなっていった。『まあ、いいか…』と言う心の声が日常となった。カップ麺のゴミが山のようになって散乱したが、田所にゴミを捨てに出る元気はもうなかった。目に見えるのだから、捨てに行かねば…とは思えた。幸い、ゴミ袋に入れる気力は残っていたから、田所はその中へカップ麺の容器の山を入れた。そこまではよかった。しかし、何も解決されてはいなかった。相変わらずゴミ袋の山が部屋中を囲んでいた。『まあ、いいか…』と田所は思った。田所はそのとき、いいアイデアが浮かんでニンマリと笑った。

━ そうだ! ベッド代わりにして、この上で寝ればいいじゃないか… ━

 そう思った田所は、その夜、そうした。

 朝になったとき、田所にはもう会社へ出勤する気力が残っていなかった。

「あの…田所です。体調が悪いんで、すみませんが今日は休ませてもらいます…」

 残された気力で、田所は会社へ携帯をかけていた。

「ああ、田所さん? 課長にはそう言っておきます。お大事に!」

「なんだ、畑山か。頼んだぞ…」

「はい!」 

 上手うまくしたもので、後輩の畑山が電話に出てくれ、田所は事なきを得たはずだった。ところがどっこい、悪くしたもので急に悪寒に襲われ、田所は意識が遠退いた。遠退く意識の中で、田所は『まあ、いいか…』と思った。

 気づくと、田所は自分の写真が安置された祭壇を眺めている自分に気づいた。僧侶の読経の声が流れ、自分の横には後輩の畑山が座っている。田所は畑山の肩を手で押した。

『おい! 俺だ、畑山』

 しかし、畑山は気づかないまま、気落ちした顔で座っていた。『妙だな?』と田所は思った。それに畑山を押した手の感触がなかった。田所は、俺は死んだのか…と気づいたあと、『まあ、いいか…』と思った。

「ぅぅぅ…、田所さん! ゴミ袋の片づけ…大変だったんすよっ」

 畑山の半泣きで小さくつぶやく声がした。田所は、『そっちかい!』と怒れたが、そのあと『まあ、いいか…』と、また思った。


                      THE END

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