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セロリ  作者: 蜷川杏果
2/5

無題の日々

 セロリみたいな人ってどんな人だと思う。

「な、なんだよ突然」友人が戸惑うのを初めて見たな。……いやまあ、そのセリフ僕が彼女に聞きたいことなんだけど、返してくれないかな。

「あんまいい意味じゃないんじゃないか」

「やっぱりそうかあ」と返すと、友人が不思議そうにこっちを覗きこんでくる。お前のほうがちょっと身長高いんだから、やめてくれないかな。ちょっと悲しくなってくる。女子大生の選ぶ理想の身長より友人は3センチ大きい。僕は8センチ小さい。彼女の身長は高くなかったから二人で歩いても変じゃなかったけど、友人と歩いたほうがいいカップルに見えたのかもなあ。二人で出かけたことあるって言ってたけど。

「振られた」

「あれ、誰と付き合ってたんだっけ?」

「今井さん」

「お前は女友達が俺よりずっと多いし、そんな話初めて聞いた」僕はあんまり友人と恋の話をしないからなぁ。特に彼はあんまり恋愛に関しての話をしたがらない。僕に彼女がいるって聞いた時に藍音にショックだったと言ったらしい。藍音と友人はけっこう仲がいいけどあまり気にしていない。彼女は男と遊びに行くときはきちんと報告してくる。そして僕は彼女を信じてるから、僕も送り出せる、というわけだ。相手の男を信じられなくても。だから今回のことも、二人目の男は関与していなくて、僕が愛想をつかされただけなんだろうな。

いつも僕が好きな人は相手から離れていってしまう。僕のこと好きな人はずっといてくれるけど、一緒にいてほしい人はいつもいなくなってしまう。僕を好きな人はずっと一緒にいてくれるってさすがに当然なのかもしれないな。だけど、僕が好きな人は離れてってしまうから自分にちゃんとした魅力がないのかなあなんて思ってしまう。

 もしももう一回話ができたなら、いろんな人に聞いて回りたい。彼女はなんて言うのかな。

「ああ」幸せになれっこないと思ったから離れていったんだった。彼女に会うための口実を見つけられて、嬉しかったのにな。……まぁそもそも会えるなら戻ってきてくれる気もしたけど。


 まぁいつも通りっちゃあそうかもなあ、なんて思いながらオムライスを作る。古くなったご飯をごまかすためのケチャップは多め。コンソメでも入れておこう。鶏肉刻んで入れておきたいんだけどベーコンにした。彼女はベーコンだと怒る。チキンライスがいいって。もう二度と僕のオムライス食べないんだろうけどね。

「おいしい」彼女の作ってくれたごはんの時には素直に言わなかった言葉がぼーっと出てくる。彼女のご飯はおいしかった。だけど彼女は僕の作る料理が好きなので自分の料理に引け目を感じていたみたい。……というか彼女の包丁使いは正直見てて不安になるのであまりほめるのも怖かったというか。キーマカレーが作ってあった時何回彼女の手が切れたかと想像して怖かった記憶が甦る。絆創膏貼ってないから無傷だったんだろうけど、彼女なら指一本なくなっててもおかしくないくらいの量の野菜がみじん切りにされていたからな。

 布団に入る。彼女がいなくなったおかげでというかなんというか、寝る時間は早くなった。自力で起きないといけないので、彼女には悪いが生活リズムは整ってきた。単調ではあるが、健康的だ。

 彼女のいない日々には、日記をつける意味があまりない。彼女が今日はこうしてくれたとかがないと毎日ほとんど同じ時間に帰ってきてテレビをつけて同じような時間に寝るばっかりだから。プレゼン力を伸ばす方法か何かに毎日の日々に見出しを付けるというのがあるけど、彼女がいなくなった日から、僕の日常に見出しはない。

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