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セロリ  作者: 蜷川杏果
1/5

あなたってセロリみたいな人なのね 幸せになんかなれっこないわ

 彼女だった人がそう書き残して出ていったのは節分が終わったばっかりの時期で、彼女は僕にとって鬼じゃなかったのにな、とそう思った時には口に出ていた。

 彼女が部屋に残していった痕跡はたくさんあるんだけれど、彼女が掃除機までかけてキレイにしてくれた部屋の中でもひときわ強烈だったのが彼女の字で書かれたその三十一文字、そして母親に見つかったエッチな本みたいに僕がサプライズであげようとしていたネックレスが晒されていたことだった。シンプルなスワロフスキーのネックレス。たぶん似合っていただろうな。

 バレンタインデーになったら渡そうと思ってたのに。

 10時になったばかりなのにもう彼女のいた場所には温もりがなくて、いったいいつ出ていったのか見当もつかない。掃除機をかけていたときに起きろよ自分。彼女がいると安心してしまうのがよくない。…よくなかったな。彼女は自分の部屋に戻ったんだろう。今日はわがままを言って会ってもらっていたからなあ。今日からレポートを書きはじめると言っていたから、本当に申し訳なかったな。別れ話がしたくて来たんだったら、僕はそれを完全にスルーしたわけで。

 そういえば、昨日、一回も笑ってくれなかったな。

 ……そして僕はもう一度机の上を見る。セロリ?野菜の?……実は食べたことがない。なんか苦手な人が印象なんだけど、うーん。アクが強いって言うことかなあ。『人当たりはいいほうだよね』って彼女に言われていたような気がしたけれど。あれは……わかってたけど嫌味だった。人を選ぶよねという意味だったのかな。彼女は僕のそういうところ嫌いだったみたいだ。


 お腹がすいたことに気が付いて、僕は食パンを焼く。ピザ用のトマトソーススプレッドはたぶんそのまま焼いてもおいしいさ。君はいつもチーズかけて焼いてたけど。コーヒーは多分適当でも飲めるでしょう。粉撒いて砂糖入れて牛乳も溶かしてみる。君はいつも砂糖溶かさないで出してきたよね。自分で入れなさいって。最初のほうは入れてくれたのにな。

 うん、おいしい。まぁまぁ。

 もう恋なんてしないとか言わない。僕は、きっとまた恋をするでしょう。さよなら。

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