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初恋ショコラ企画☆参加作品集  作者: 鏡野ゆう
第1部 「皆で初恋ショコラ」企画
1/4

始めの一歩は初恋ショコラ - Sな人 -

トムトムさんと春隣豆吉さんの共同企画「皆で初恋ショコラ」。

どのカップリングで参加しようかと迷いつつ『Sな人』の2人をチョイスしてみました。

一番似合わなさそうな2人だと、初恋ショコラもこんな感じになっちゃうよと(笑)

ケーキとぼくのキス、どっちがすき?


「くだらん」

「はー……本当に香取さんってロマンチックな思考がミジンコレベルも無いわよね。そんなんで絢音を捕まえていられるのかしら、心配だわ」


 待ち合わせ場所を定休日の“西風”にしたのは間違いだったかと到着10分で早くも後悔しはじめる香取隼人であった。俺が暴れ出さないうちに早く来い三笠!と待ち人の名前を心の中で叫んだ。


「コンビニのケーキを宣伝する暇があったら自分の店のケーキでも宣伝したらどうだ」

「ご心配なく。宣伝しなくても口コミで商売繁盛です」

「相変わらず口の減らない女だな」


 顔をしかめると、オタマをこちらに向けてきた。


「私はね、親友のことを心配して言ってるの。せっかくロマンチックなシチュになれそうなコンビニスイーツがあるってのに使わない手は無いでしょ? ほんと、熟年夫婦みたいなまったり空気を何とかしたいとは思わないの?」

「思わん」


 互いの利害の一致で始めた付き合いだ。別にいい雰囲気になりたい訳ではない。それに付き合っているというのも表向きの話であって実のところは付き合ってすらいない。周囲の目もあるのでこうやって出掛けているだけだ。


「だいたいだな。27と24の男女がコンビニ商品で甘い雰囲気になるとかどう考えても無理があるだろう。商品名からして無理だ、初恋ショコラだろーが。どう考えても初恋って年じゃない」

「はぁぁぁぁ、ダメだこりゃ」


 カウベルの音がして絢音が入ってきた。手にはコンビニのレジ袋がある。


「お待たせです、香取さん。あ、葉月これ、頼まれたもの買ってきたよ。珍しいね、葉月がコンビニスイーツを食べてみたいだなんて」


 袋の中からカップを取り出してカウンターテーブルに並べられていく。透明なプラスチックの容器に黒蓋、更には金のリボンのパッケージときた……なんいうか自分とはかけ離れた世界の異物だと思えてしまう。これがさっきから葉月がキャンキャン吠えてる原因の一つのコンビニスイーツだ。200円? 安いのか?高いのか?それすら分からん。


「絢音、それのCMみたことある?」

「何度か。あの何とかってアイドル君達の出ているやつよね」

「そうそう。ケーキとぼくのキス、どっちがすき?ってフレーズがファンの間ではそりゃもう大流行ってやつよ。初恋ショコラなんて名前からして、キャーッて感じ」


 それが理解できないなんてという顔でこちらを見るが、知るか、そんなもの。他の隊員から聞いたところによるとCMだけをわざわざ録画して眺めているファンもいるらしいと言うのだから世も末だ。


「なんか買うの恥ずかしかったよ?」


 絢音の方は店員さんの生温かい目つきを思い出して顔をしかめた。


「なんでよ」

「だってこれ買ってるの中学生とか高校生で若い子ばかりだったもの。なんか凄く自分が浮いている気がした」

「あんたも充分に若いでしょ」

「でも老けて見えるって」

「誰が」

「香取さんが」

「は?! 目がおかしいんじゃないの?!」

「視力は2.0だが」

「誰がボケろと?」

「事実を言ったまでだ」


 葉月が二人の顔を交互に見詰めると殊更大きな溜息をついた。


「ほんとにあんた達ときたら……ほら、さっさとデートでもしてきてちょうだい、私は忙しい」

「「デートじゃない」」


「追い出されちゃいましたね」


 来たばかりなのに。せめてカフェラテぐらい驕って欲しかったよ葉月ちゃんとぼやいている。


「女の考えることは理解できん」

「葉月はキューピット役にはまってるんです。あのスイーツもバイトの子とその子の片思いの男の子に渡すつもりでいるらしいんですよ」

「お節介な奴だ」


 フンと鼻で笑う。


「それが葉月のいいところでもあるんですけどね」

「ケーキとぼくのキス、どっちがすき?、か」

「え?」

「あんたならどう答える?」


 三笠は目をぱちくりとさせてこちらを見上げてから暫く考え込んだ。


「それは相手にもよるのでは?」

「ふむ、もっともな答えだな」

「香取さんはどうです?」

「“ぼくのキス”の時点で論外だろ」

「あ、そっか。じゃあ、ケーキと私のキス、どっちがすき?ならどうです?」

「ケーキとキスを同列にすること自体が間違っていると思うんだが……」


 うーむと考えている様子。


「先週だったか部隊の事務屋のお嬢が買ってきてな。だから味は分かっているんだが……」


 何を思ったのか香取は絢音の後頭部に手をやり引き寄せると唇を重ねた。そして何事も無かったかのように唐突に離す。その顔は普段と何ら変わりがない。


「?!」

「チョコレート味よりも苺ミルク味の方が好みだから、今のところ“私”というのが答えだな」

「……飴、飲み込んじゃいました」

「それはスマンな」


 謝るのはそこなのか?!と突っ込みを入れたい絢音である。





「お姉ちゃん、大変だ! 事件です!!」

 学校から直接ここに来たらしく制服姿のままで妹が店に駆け込んできた。

「どうしたの?」

「今さっき、絢音ちゃんと香取さんがキスしてるの見掛けた!」

 思わずガッツポーズの葉月。


 初恋ショコラ、その効果は実に恐るべし。

そして実は香取隼人が甘党だということが判明したエピソード。


そして葉月、ミジンコに謝れ!

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