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期待された悪魔

作者: 伊勢崎みや

 ショートショート2作目です。

 ある国とある国が戦争をしていた。かれこれ長い間、戦争をし続けた。

 何をもってここまで戦争をし続けたかというと絶世の美女を手に入れるためだった。

 王様たちがその美女と結婚したいがための戦争なのだ。


「何が何でもあの美しい女性を手にいれるぞ。決して負けてはいかんのだ。」


「しかし王様、相手方もなかなか負けてはくれませぬぞ。しかも、私たちの国の兵力は

 ほとんどありません。このままでは、どのように戦っても勝ちようがありません。」と大臣が言った。


「兵力は劣っているかもしれぬが、武器は豊富であろう。私たちの国は武器をつくるための

 資源がありとあらゆるところでとれるのだからな。」


 この国には兵力は足りないものの武器は豊富にある。

 一方で相手側はというと、


「何としても、あの美女と結婚がしたい。戦況はいかほどであるのか、参謀長よ。」


「はい、王様。 やはりまだ五分五分であるかと思います。しかし、私たちには武器が不足して

 おります。兵士の数はごまんといるのに、武器がなくては戦いようがありません。」


「武器を作ればよろしかろう。」


 と王様が言っているのを、何もわかっていないなあと参謀長は思いながら、ため息をつくのであった。


 この相手側の国は兵力はあるが、武器が不足しているという事態に陥っていたのだ。

両国が不足しているものは敵国が豊富に保持している状態だ。この状況を面白がっていたのが悪魔であった。


「王様、わたくしは見ての通り悪魔でございます。しかし、そこらの悪魔だと思っては困ります。

 わたくしは、善良な悪魔なのでございます。何かお困りなことがあれば、何なりとお申し付け

 ください。わたくしが、叶えてさしあげましょう。」


「代償は何を求めるのだ。」と王様が悪魔に問いかけた。


「そんなものは結構でございます。さきほど申したとおり、わたくしは善良な悪魔なんですから。」


「そうかそうか。それではお前に私の願いを叶えてもらおう。私の国は今、兵力がかなり不足している。

そこで、兵士の数を増やして欲しい。どうか頼む。」王様は懇願した。


「お安い御用ですとも。わたくしが兵士の数を増やして差し上げましょう。」

悪魔は得意気な顔をして王様の願いを叶えた。


 悪魔はさらに敵国に出向き今までの経緯を敵国の王様に報告した。


「悪魔よ。わたしの国も実は武器が不足しているのだ。相手国の兵士の数を増やすことが可能なのであるから、武器を増やすことも容易なことであろう。私の願いを叶えてくれ。」

王様は必死の形相で悪魔の肩をつかみながら言った。


「わたくしにできないことはありません。そして、王様の願いも叶えて差し上げましょう。

 わたくしは善良な悪魔なのですから。」


そして、敵国側の武器は大量となった。


 お互いに不足していたものが満たされたため、戦争は一層に激化してしまった。そして、今度は食糧が両国尽きてきたところに再び悪魔が現れ、食糧も大量に与えたのであった。

 このようにして、戦争に不可欠なものがなくなっていくと悪魔は現れ、次から次へと色々なものを両国に与え続けた。そんなことであるから、戦争が終わることはなかった。


戦争をし続ける中で、悪魔がある提案をしてきた。


「王様、わたくしにひとつ提案がございます。戦争の原因でもある絶世の美女をここにお連れしましょうか。そうすれば戦争は続くかもしれませんが、美女は王様のものとなりましょう。」


「そうか。そうすれば、進んで戦争することはなくなり敵国もあきらめがつくかもしれない。

是非に頼むぞ。悪魔よ。」


「かしこまりました。わたくしは善良な悪魔でございますから。」


そして、悪魔は敵国の王様にもこの提案をした。


「よしよし。そうであるならば、美女は私のものになるな。」と王様も満足気な顔をしてうなずいた。


そうして遂に悪魔は王様たちの願いを叶えることに成功した。


「王様、この方が王様が何としてでも手にいれたいと切に望んでいた方です。」


と悪魔が連れてきたのはとても醜く、美女とは到底思えない女性がそこに立っていた。


「話が違うではないか。私が連れてこいと申し付けたのはあの美しく清らかな女性であるぞ。

今まで多く願いを叶えてくれたが、このようなことは初めてだ。」と王様は怒りをあらわにした。


「いいえ、この方が絶世の美女に間違いはございません。ただ、この女性がわたくしに願いを叶えて欲しいと言ってきました。私が醜くなれば、私を求めて戦争することはなくなるだろうと彼女は思っていたのです。そこでわたくしは願いを叶えることにしたのです。」


「どうしてそんなことを・・・」と王様はひざを落とし落胆した。

すると悪魔が王様に近づいてこう言った。


「何回も申したではありませんか。わたくしは善良な悪魔でございますと。」







やはり悪魔には気をつけなければなりませんね

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