第三章 『デュアルコール』
今回は少し短めなのです……。
いつも通り、俺は学校にいって、授業を受け、飯を食い、また授業を受け、生徒会室によっていつも通りに、雑務をこなし、それから、適当に寄り道をして、自宅に着き、晩飯を適当に作って、自分の部屋で宿題をして、録画していたテレビを見て、風呂に入り適当に明日の準備をして、寝た……。
何も、面白くもない俺の一日の大まかな行動記録……この前みたいに不審者に追われることもなく、平凡に過ごしていた……。
「……あき……目……さま……」
誰だ……この時間に起こしに来るのは……?
「あきら! 起きろ、目を覚ませ!」
はっきりと俺の耳に伝わるのは、いつかの夢で聞いたもう一人の俺の声だった……。
「また……お前なのか……一体何者なんだよ……」
「ようやく起きたか……私は、お前にようがあって起こしたのだ、お前の夢の中でしか会うことができないからな……」
実際には起きてないんだけどな……精神的な何かなんだろうな……。
さっき俺の平凡でなんでもない一日を語ったのに、何の説得力も無くなっちまったじゃないか……。
「お前が、平凡? ずいぶんなほら吹きだな?」
「だから、俺の考えを読むなよ……」
「そんなことは置いておいて、大事なことを言っておかなければならないのだが……そういえば、お前は『雷使い』の能力も手に入れたんだよな?」
「今じゃ、『電刃鏡光』も余裕で使いこなせるぐらいになってるんだ……で、それがどうかしたのかよ?」
もう一人の俺は、考え込んでいるようで、ぶつぶつと何かをいっていた……。
「よし! 決めた……私に一撃見舞うことが出来たら、真の『コール』を教えてやる……時間制限は、そうだな、この世界が壊れるまでだ!」
「戦うのは別にいいけど、いい加減お前の名前を教えろよ!」
「ふむ、私の名前か……そうだな、この場合だと私は『涼一』とでも名乗っておくべきか……」
涼一か……。
何故だか俺はどこかで聞いたことのあるような感覚に襲われる……。
「さて、戦うのか否かはっきり答えろ!」
もちろん! と答えたいところだが、何かが引っかかったままなのだ……。
「もう一ついいか? 涼一は本当にお前の名前なのか?」
直感で言葉を紡いでいくとおかしな質問になった……まるで、俺は目の前にいるもう一人の俺は偽名を使ったのではないかと……。
「その質問にはまだ答えられないな……それでは始めるか!」
「「『コール・アクセル』!」」
本当に能力使えるのかよ……。
「ああ、この世界なら、発動条件なんて有って無いようなものだ」
涼一はしゃべりながら距離を取る……。
俺はその間をなるべく開けないように詰めていく……。
「は、速い……くそ、なんで、逃げるんだよ!」
「先行をやろうと思ったのだがな? いらないのであればこちらから行くぞ!」
アクセル状態の涼一が、一直線に飛び込んでくる……。
かかった!
「『コール・スパークマスター』! 来い『電刃鏡光』!」
おそらく、ここでならできるはずだ……。
ここは、『俺』の世界だ! できないことなんて無い!
「『影』から『実態』に……『雷刃鏡明』!」
電刃鏡光は放電し中から日本刀が現れる……。
その瞬間、涼一は、一歩後ろに飛び退いた。
「ほう! ならば『コール・スパークマスター』……『雷刃鏡明』」
同じように涼一の右手から日本刀が現れる……。
「一気に『実態』かよ……」
涼一が突き刺す体制で俺に向かってくる……。
それを、刃をこすらせて受け流し、飛び込んでいる涼一の横っ腹に蹴りを加えてやったはずだった……。
それを、察知したのか、涼一は俺の蹴りを避けて、俺の脚をつかみ、振りあげた右手で俺をおもいっきり地面に叩きつける……。
「がはっ! ちっ……このやろう!」
俺は『雷刃鏡明』を涼一めがけて投げる……。
「甘いな、その程度の小細工が通用すると思ったのか?」
「甘いのはお前だ! 『支配する電撃』!」
俺の『雷刃鏡明』が、涼一の『雷刃鏡明』の守りをするりと抜ける……しかし、それでも、涼一は、無茶苦茶な反応速度で『支配する電撃』をうけてる『雷刃鏡明』をかわす。
「危なかった……『雷刃鏡明』を失ったお前はどうするかな? では、今度は私の番だ」
「まだ、俺の能力は終わっちゃいない! 『コール・ブースト』!」
涼一の『雷刃鏡明』の刃が俺に襲い掛かる……。
……来た!
パシッ! バキィィン……。
「こんなことが本当にできるなんてな……びっくりしたぜ」
「真剣白刃どりか……しかも、止めるだけでなく、ソードブレイクまでやってのけるとは、たいしたものだな」
「……褒められてもあんまり嬉しくないな、竹城や風華なら別の話だけどなあ」
「ふん! お前はお前だな……まあいい、では……行くぞ! 『二重呼び出し(デュアルコール)・ブースト・アクセル』!」
涼一はほとんど助走なしで、ジャンプする……それはかなりの高さで、棒高跳びの高さを棒なしでやっていた……。
「おい、何だよ『デュアルコール』って! それにそんなにジャンプしてどうしたいんだ!」
「『高速拳・弐ノ型襲撃』! くらえええ!」
涼一は一気に降下してきて、仮面かぶったヒーローよろしくダイブキックを俺にみませる気なんだろう……。
「そんな攻撃じゃ、高速拳とは言えないぜ?」
俺は、壱ノ型の構えをとる……。
「甘い! 壱ノ型ごときで襲撃を止められると思うなよ!」
考えが甘いのは、お前の方だ……壱ノ型から次が生まれないわけがない……第一に俺はまだ『ブースト』を解除していないんだからな……。
涼一のダイブキックは、もちろん空振りに終わる、ただ、そこから壱ノ型のように猛烈なラッシュを決めてくる……。
俺が、なんのために、この構えだと思っているんだ……その理由は単純明快! この構は『防御』のためにあるんだからな!
「いくぜ『高速拳・参ノ型防塵』」
涼一のパンチが右・左・右・脚払い・アッパー・ボディーと連続で続く……それを俺は参ノ型で、防御していく……。
くぅ、一撃一撃が重い……。
これが『デュアルコール』なのか……『アクセル』しつつ、『ブースト』もする……まるで、チートじゃねーか。
「ふん……防御はその程度か……弐ノ型のはただの壱ノ型とは違う!」
「どう違うっていうんだよ!」
俺が言ってる間に涼一の姿が一瞬見えなくなり、次の瞬間には、俺の腹に深く涼一の両足がめり込んでいた……。
「がっ……かはっ……」
俺は、後ろに吹っ飛ばされる……。
物にはぶつからになかった、何せここは精神世界、精神が少しでも壊れてもらっては、現実の俺が困るからな。
すでに、追いついている涼一は、倒れ込んでいる俺に覆いかぶさる姿勢になる……。
「どうやら、お前の負けのようだな……」
「そうらしいな……」
ただ、ここで、普通に負けを認めるのは釈然としない……俺は最後の悪足掻きをすることにした……もちろんタイミングも決めている。
「どうした? 抵抗もしないのか?」
「そうだな、俺は状況判断をして、最も適当なのが『何もしない』になったんだよ」
「そうか……ならば、そこで寝ていろ……そして、『消えろ』……」
涼一が右手を振りあげる……そう、この瞬間を俺は待っていたんだ。
体勢的に、一番距離を稼がないと、ダメージが半減するこの状況……そして、片手を挙げる分バランスも傾きやすい……何より、後方の防御が疎かになる。
ここで、繰り出すは膝うち……もちろん例外なく俺の威力も半減されるのだが……この勝負では俺の攻撃が一撃でも入れたら俺の勝ちになるんだ……つまり、この体制になった時点でお前の負けなんだよ涼一。
膝うちは、軽々と決まった、威力が半減されるとはいえど、俺は『ブースト』状態なんだから、結構なダメージのはずだ……。
「がはっ! バカな……戦意喪失していたのではなかったのか!」
「そんなもん、最初っから演技だよ」
「くっ……私の負けだ……では、教えよう……『真の呼び出しデュアルコール』を」
「そうか……それならたぶんこうやるんだろ?」
この世界でなら俺は、出来る限りの事なら何でもできるんだと思うつまり直感でも、何の障害もなく一発で出来るんだと思う……。
「『デュアルコール・アクセル・ブースト』!」
体が、ふっと軽くなった気分になる……なんというか言葉では言い表せない不思議な感覚だった。
「そうか、気づいたか……それもそうか……私自信が使っていたのだからな」
「いや、俺も何となく使えるんじゃないかって思ってたんだけどな……というか、使えたらいいのにっていう願望だけど」
「願望が叶ってどうだ?」
「さあ? そこまで、変わった気はしないな」
「そうか」
「ははは」と抑え気味に笑う涼一……何がおかしいのかさっぱりだ。
「あきら……どうやら時間らしいぞ?」
「え?」
周囲は崩れだす……前の時と違って俺位置から崩れるのではなく俺の位置に向かって崩れだしていた。
「なあ、この世界にはまた来れるのか?」
「ああ、ただし私がお前にコンタクトを取らなくてはいけないがな……必要になったら私はあきらを呼ぶだろう」
「そうか……俺は涼一に聞きたいことが山ほどあるからな……どうか、つながりを断たないでくれよ?」
そう俺が言ったところで、俺は闇の中に落ちる……。
その後の事は何も覚えていない……。
久しぶりの登場涼一君!
バトルシーンを中心に書いてみました・・・物足りなかった方申し訳ないです(汗
今章も登場しなかった怜と風華……次こそは出てきます!