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小さな婚約者

作者: 瀬田双樹






小さな婚約者が出来たのは、七歳の時だった。

父親と父親の友人の約束事であったらしい。──「お互いの子供を結婚させようなっ!」などという人の人生を勝手に取り決める、最悪な約束。

しかしながら同年に結婚したらしいが、父親の友人…野々宮さんは中々子宝に恵まれずにいた。その代わりか、野々宮夫妻は私を実の娘のように可愛がり慈しんでくれた。だが、それも……夫妻に本物の子供が出来るまでだった。以来、婚約者たる野々宮夫妻の息子、聡明くんの未来の奥様、つまりは義理の娘としての扱いが始まったのである。

いやさ、七つ下って犯罪よ?


「…ねえ、離れない?ソウくん?」

「嫌です」


昔は「あきらちゃん」と可愛く私の名前を呼び、一生懸命後ろを着いてきた少年…聡明くん。身長も体重も私よりも大分少なくて、読みは「さとあき」なのだが、両親が特別なニックネームとして聡の音読みのソウくん呼びを薦めて来たのでそれに従っている。しかし、そんなソウくんも中学一年生になった。

身長は私と同じ位まで育っている。…これからどんどん成長していくのだろう。

自らの腹部に回っている彼の腕も、やや筋肉がついている。男性らしい力強さの片鱗が現れてきたようだ。

嗚呼、彼のおしめを交換した日々はいずこ。嗚呼、彼の幼稚園のポンチョ姿はいずこ。嗚呼、彼のランドセル姿はいずこ。


「…何を考えているんですか?」

「へ!?」


私の首元に顔を寄せて聞いてくるソウくんは、何処と無く拗ねた様子だ。

彼にとっては都合の悪い過去、私にとっては可愛らしい過去を思い出していたと言えばどう反応するだろうか。

まだ大人になりきれていない彼は、「やめて下さい!」と顔を赤くするだろう。そして、一日プンスカとした状態になる。見てる分には可愛らしいが本人としては堪らないであろう、きっと。

だから、人差し指を彼の唇に押し当て――自称、大人のオンナスマイルで告げる。


「…秘密」

「そ、そうですか」


ソウくんは一瞬、口ごもった。これは照れている証拠である。何だかんだ言いつつも、私の婚約者さまはまだまだ純粋な中学生なのだから。

しかし、彼は何時までも小さな男の子ではない。

その証拠に――笑いを噛み殺していた私に、反撃の狼煙を彼はあげた。


「あきらさん、…俺はあなたの婚約者なんです。何時までも、翻弄される側にはいませんから」


後ろから抱きついていた手を放し、ソウくんは首筋にキスを落として…額を同じ場所に押し当てた。

…思考回路が停止した。

所詮は純粋な中学生、と侮りすぎていたのかもしれない。

ぎこちなくなった私を見て、満足したような――気持ちの高揚を伺わせるソウくんの声が再び紡がれる。


「待ってて下さい。貴女の年齢には追い付けないけど、隣には立てます。貴女を俺の胸の中で抱き締められるように――きっとなりますから」


そう、不敵に笑ったソウくんの顔は男の子ではなく、男の顔付きになっていた。

立場が逆転して、私が彼に翻弄される日は遠からず来るであろう事を―――まるで、暗示していたかのように。




つまりは年下敬語純粋少年が書きたかっただけみたいです。



一応設定。


(名字未設定)あきら

聡明の婚約者。

ショタ趣味と友人から誤解を受けている。だが、実際は…年下の婚約者がいるので否定は出来ない。別に短パンや膝小僧は好きではない。

大人のオンナぶって聡明をからかった事を、後悔する日が来る事を彼女はまだ知らない…。


野々宮聡明

中学生。思春期に入りかけの素直な純粋少年。将来的にはあきらと立場を逆転させる。

好意は接触で示すタイプ。抱きついても中々意識してくれないあきらに、多少むくれている。

身長を伸ばそうと密かに努力している。


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