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世は逝きゆく  作者: 夕日
1/1

南境異変

1. しょう:本作固有怪物名、音読み固定


2. 偽人ぎじん:感染者、造語として漢字そのまま使用


3. しん岳陽国がくようこく玄水市げんすいし臨江市りんこうし:国・都市名は音読み統一


4. 秦暦しんれき:架空年号


5. 第七装甲師団だいななそうこうしだん:軍部呼称、日本軍用語準拠

陽は高校生だ。

幼い頃、故郷は戦乱が絶えず、両親は戦争で命を落とした。

彼と弟は難民として秦に受け入れられた。

十年の時が流れた。

兄弟はようやく穏やかな日々を手に入れた。

だが、この平穏は長くは続かなかった。


秦暦217年9月。

南辺国境から急報が届いた。

岳陽国の軍が突如全面攻撃を仕掛け、国境守備隊は多大な損害を被った。

たった三日のうちに、複数の都市が陥落。

国中が激しく動揺した。


戦闘が長引くにつれ、さらに恐ろしい知らせが伝わってきた。

最初に陥落した玄水市との連絡が途絶えたのだ。

軍も政府も市内と通信を取ることはできず、派遣した偵察ドローンはすべて行方不明となった。

まるで都市ごと地図から消え去ったかのように。


五日目になって、損傷した一台のドローンが自動的に基地へ帰還した。

機体には最後の映像が残されていた。


会議室。

全ての将校は青ざめた顔をしていた。

映像に映る光景——

通りには死体が敷き詰められ、車同士が衝突し、家屋は炎を上げて燃えている。

だが最も恐ろしいのは、その死体たちが動き出していることだ。

糸で操られた人形のようにゆっくりと歩き、体は不自然にねじれ、関節は逆向きに折れ曲がり、瞳は真っ黒に濁っていた。


突如、ドローンのレンズが遠方へと向く。

広場の中央には身長三メートルに及ぶ人型の怪物が佇んでいた。

全身は真っ黒で、まるで濃い煙で形作られたかのよう。

無数の黒い触手が体の周りで蠢いている。

次の瞬間、怪物が顔を上げた。

画面は一瞬で信号を失った。

会議室には重苦しい静けさが漂った。


国防省はこの怪物に一つの名を与えた——

しょう」。


それと同時に、南部では連鎖的に都市との連絡が絶たれていった。

軍が都市へ進入して確認したところ、多くの住民は既に命を落としているのに、なお動き回っていた。

これら感染した人間たちは「偽人ぎじん」と呼ばれるようになる。

生前の記憶を持ち、言葉を真似て話すことさえできるが、もはや人間ではない存在だ。


秦最精鋭の第七装甲師団が臨江市へ清討に向かった結果、生還者はわずか十二名に過ぎなかった。

生き残った兵士の報告によると、偽人は最も危険な存在ではないという。

都市の深部には本物の殤が潜んでいる。

彼らは幻覚を生み出し、人間の精神を操る力を持ち、兵士たちに死んだ肉親の幻影を見せることさえできる。

多くの兵士がその幻に打ちひしがれ、精神が崩壊した。


事実がニュースで公表されると、国中にパニックが広がった。

陽も初めてそれらの写真を目にした。

写真に写る怪物の姿を見て、彼は幼い頃故郷に伝わる伝説を思い出した。

戦争で多くの人が死ぬと、怨念が集まって怪物となり、生きた人間の魂を喰らい、都市全体を死の淵に引きずり込む——老人たちが語る昔話だ。

陽はかつて、それがただの作り話だと思っていた。

だが今、伝説が現実となったかのように。


三日後、秦は全国動員令を発布した。

多くの青年が入隊し、軍部は南部へ集結し始めた。

陽は黙って徴兵受付へ赴き、申込書に記入した。


将校が彼を見つめて問う。

「前線がどんな場所か知っているか?」


陽は肯いた。

「知っています」


「そこでは毎日人が死ぬ」


「承知しています」


「そこには人間の力では打ち勝てない敵がいる可能性さえある」


陽はしばらく黙った後、ゆっくりと語った。

「幼い頃、私は両親を守ることができませんでした。

今回、守らなければならない人々がいるのなら、私は行きたいです」


将校は目の前の十八歳の少年を長く見つめ、やがて一つのバッジを手渡した。

「秦陸軍へようこそ。今日から、お前は一人の兵士だ」


一方、遠く離れた南部。

陥落した都市の深部では黒い靄が広がり続けていた。

無数の偽人が通りの両側にひれ伏し、廃墟の中央には他の殤よりもはるかに巨大な影がゆっくりと瞳を開けた。

その瞳孔には妖しい金色の光が煌めき、まるで北方、秦全土を見下ろしているかのように。


人間と殤との戦いが、今、幕を開ける。

なし

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