情報を求めて25里
「はぁ…はぁ…ふぅー…」
村から出発してから、サガは休みを入れつつ走り続け、遂に半日足らずで町までの道を走破した。
(休みは挟んだとはいえ、流石に疲れた…昼食も摂ってないし、取り敢えずご飯を食べて、宿を取って…今日のところは、少し町を歩いたらもう休もう)
着いた町は、事前の情報の通り、中心の山を囲うようにかなり大きく広がっており、家々は木造の簡素なものが殆どだったが、それでもあの村の家よりは大きそうだった。
サガはまず、飲食のできるところを探して、人々が行き交う大通りを進んでいった。
道の両側には様々な屋台が出ており、青果、肉、花、装飾品など色々なものが売られていた。
中には何やら蛇や蜥蜴のような生き物を焼いて売っている店もあったが、良いところが見つからなかったらにしよう、と横目にそらして通り過ぎた。
もう少し歩き、屋台の列が途切れると、宿や酒場などが現れてきた。
適当に、店先のベンチで酔っぱらいが噂話で盛り上がっている酒場に入っていった。
店内は窓が一ヶ所しかないため微妙に薄暗く、天井から吊り下げられたランプが、全体を温かな色の光で照らしていた。
昼時を微妙に過ぎたくらいの時間だからなのもあろうが、客はまばらで、殆どが一人で優雅に酒を嗜む者たちだった。
サガはカウンター席に座り、上に吊り下げられているメニューの看板を見た。
見たことのない文字だったが、所持していればどんな言語も文字も理解できるマジックアイテムのお陰で、問題なく読むことができた。
(便利だから肌身離さず持つようにしてたのが功を奏したな。さて、何を食べるか…)
先程からせっかちな店主がチラチラと様子を伺ってくるので、サガはさっさと適当にメニューを決めた。
「店主さん。パンと、腸詰め肉と、豆のスープを」
「はいよ」
注文を受けた店主は奥へ消えると、十数秒でパンと腸詰め肉が載った皿と、豆のスープを持って戻ってきて、それらをサガの前に置いた。
「いただきます」
パンは村で食べたものより少し柔らかく感じ、腸詰め肉はかなり太め、かつ保存のためか塩味がかなり効いていたが、長時間走った後の体にはよく沁みた。
豆のスープはかさ増しのためか、なんと器の中の半分以上を豆が占めていた。
空腹だったのでペロリと平らげると、代金を支払って店を出た。
次にサガは二つ隣の宿屋へ入り、一番安い部屋を取っておいた。
宿屋を出ると、取り敢えずあてもなく町歩きに出掛けた。
まずは大通りを突き当たるまで進んでみた。
大通りの果ては山の入り口へと繋がっているようだった。
と言っても山は木の柵でぐるりと囲われており、入り口にも兵士が一人立っていて、自由に出入り可能、と言った雰囲気ではなかった。
次に大通りを逸れてみたが、片方はひたすら住宅が立ち並び、もう片方は工場などが集まる地区だった。
宿の周辺を一通り歩いて、ふと空を見上げると、ちょうど夕方になろうかと言う頃になっていた。
(ちょうど良い。ここらで切り上げて宿に戻ろう。明日からは、日雇いの仕事とか見つけつつ、ここらのことの他に、何か変わった話とか、噂とか、そんなのでも良いから情報を集めてみよう)
サガは来た道を引き返し、宿へと戻っていった。
いざ部屋へ入ってみると、値段相応な光景が目に飛び込んできた。
「狭い、ボロい、埃っぽい。通りで他の部屋の半額なわけだ。まあ昔に比べれば全然、上等な寝床だな」
鍵もついていない部屋なので、用心のため金の入った革袋といっしょに床に就いた。
長時間の運動と、その後の町歩きの疲労で、今日もすぐに眠りに落ちた。
翌日からサガは、日雇いの仕事を見つけて日銭を稼いでは、雇い主や酒場の人から色々なことを聞いて、知っていった。
それでわかったこととしては、ここは魔法などがあるタイプの世界だということくらい。
この数日間、全くと言って良いほど進展がないため、サガはどうしたものかと頭を悩ませつつ、今日も今日とて、いつもの酒場へ入っていった。
「ミートパイ二切れと、豆のスープを」
やはり夜になると、酒場と言うのは活気が出てくる。
店主一人では忙しいため、夜の間は奥さんがヘルプに入ってきて、その間限定で奥さん特製のミートパイが食べられる。
味は勿論のこと、人は限定と言う言葉に弱いようで根強い人気があり、実際サガもこうして連日頼んでいる。
運ばれてきた焼きたてミートパイを頬張りつつ、今後の動きについて思案するも、特にこれと言った案は浮かばない。
次の町にでも移ってみようか、などと思いつつ、代金を支払って店を出ると、常連らしい酔っぱらい二人が、いつも通りベンチで噂話で盛り上がっていた。
「そう言えばよ、つい数日前からな、物が急にブッ壊れるなんて噂があってな」
「それなら俺も聞いた!それとよ、明日から山が完全閉鎖されるって張り紙が急に出てたの、見たか?なんか関係があったりしてな!」
などと言ってゲラゲラと笑っている。
変な噂ではあるが、サガは一応頭の片隅で覚えておくことにした。




