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EP28 校舎裏、選択

インフルに罹り、投稿が遅れました、

放課後の校舎裏は、思ったより静かだった。


遠くで部活の掛け声が弾む。

ここには風と、葉の擦れる音だけ。


「如月くん」


九条の声は低い。


「はい」


まだ、生徒会室の空気が胸に残っている。


紬と柚葉の視線。

自分を挟んで軋む関係。


九条は壁にもたれ、空を見上げた。


「懐かしいわね」


「……ここがですか」


「ええ」


少しの沈黙。


「あなたが、ここで立ち尽くしていた日」


呼吸が止まる。


あの日。


強がって、誰にも見せないつもりだった。


「泣いてはいなかった」


九条は淡々と言う。


「でも、折れかけていた」


夕日が横顔を照らす。


「それでも次の日、何もなかった顔で教室に入った」


ゆっくり、視線が合う。


「強いのよ、あなたは」


「……買い被りです」


「いいえ」


即答。


風が吹き抜ける。


九条が一歩、距離を縮める。


「だから決めた」


声が静かに固まる。


「本部の配置を変える」


蓮は目を上げる。


「書記席を、私の隣にする」


沈黙。


遠くでボールが弾む音。


「副会長席の横は来客用に」


簡潔。


「あなたを、私の視界に置く」


真っ直ぐな言葉。


「守るためですか」


九条はわずかに首を振る。


「違う」


一拍。


「隣で立つためよ」


空気が張る。


「……それって」


迷い。


「特別扱いじゃないですか」


九条は否定しない。


目を細める。


「ええ」


静かな肯定。


「特別よ」


強調しない。


当然のように。


「責任も含めて」


距離が、近い。


触れない。


触れないまま、近い。


「逃げるなら、今だけだよ」


蓮は逸らさない。


「逃げません」


即答。


九条の瞳が、わずかに柔らぐ。


「でしょうね」


一瞬、沈黙。


風が止む。


九条は視線を外さず、続ける。


「あなたは、案外隙が多いのよ」


唐突な言葉。


蓮が瞬きをする。


「放っておくと、簡単に誰かに引き寄せられる」


声音は冷静。


けれど、ほんの少しだけ低い。


「だから」


ほんのわずか、間。


「手の届く場所に置いておく方が安心だわ」


冗談のようで。


冗談ではない。


「会長としての判断よ」


付け足す。


だが視線は揺れない。


「必要な人材は、簡単に手放さない」


淡々と。


合理的な理屈。


それだけのはずなのに。


ほんの一瞬。


瞳の奥に、熱が走る。


「如月くんは、私の戦力だから」


言い切る。


触れない。


でも逃がさない距離。


そのとき。


フェンスの向こうで葉が揺れた。


九条の目だけが、鋭く細まる。


(……もう誰にも傷つけさせない)


声には出さない。


けれど確かに、胸の奥で形になる。


そして何事もなかったように、


「明日から、私の隣」


と告げる。

また読みたい!!続きが気になる!って人はこれからもぜひ応援してください

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