EP19 再会の核心
「蓮さ」
玄関先の空気が、少し落ち着いたころ。
柚葉は腕を組み、じっと彼を見た。
「今、ちゃんと笑えてる?」
唐突だった。
「……は?」
「小学生のときさ、負けた日、絶対一人で抱え込んでた」
言葉が刺さる。
「“悔しい”って言わなかったよね」
覚えている。
誰よりも覚えている。
「強いふりするの、上手だった」
柚葉の目は、昔と同じだ。
まっすぐで、逃げ道をくれない。
「今も?」
問い。
逃げられない。
蓮は少し視線を落とした。
「……変わろうとはしてる」
その答えに、柚葉はふっと息を吐く。
「なら、いい」
一歩近づく。
「蓮はね。誰かの後ろじゃなくて、横に立てる人だから」
核心。
九条が言った言葉とは、違う角度。
でも、同じ方向を向いている。
――数日後/生徒会室
扉が開く。
「失礼します」
柚葉が、初めて生徒会室に姿を見せた日。
九条雅は、書類から顔を上げる。
一瞬の観察。
(この子が、もう一人の書記)
そして、すぐに分かる。
――距離。
蓮との距離が、近い。
「はじめまして。九条雅です」
穏やかな声。
柚葉は一礼する。
「三浦柚葉です。事情があって遅れてしまってすみません」
丁寧だが、視線はまっすぐ。
逃げない。
九条は微笑む。
「体調は大丈夫?」
「はい。もう問題ありません」
数秒。
言葉は柔らかいのに、空気が静かに張る。
蓮が間に立つ。
「柚葉、これ去年の資料」
「あ、ありがと」
自然な呼び方。
その瞬間、九条の指先がほんのわずかに止まる。
(柚葉)
名字ではない。
だが表情は変えない。
代わりに、視線を蓮へ。
「如月くん」
落ち着いた声音。
「あなた、今週の企画案、もう一度練り直しましょう」
「え?」
「三浦さんも一緒に」
柚葉が目を細める。
「私も?」
「ええ。二人で」
静かな挑戦状。
逃げ場はない。
柚葉は、わずかに口角を上げる。
「望むところです」
空気が、変わる。
敵意ではない。
競争でもない。
――高め合う場。
その日の会議。
柚葉は数字に強く、分析が鋭い。
蓮は構成力と実行力でまとめる。
九条は、二人のやり取りを見つめながら思う。
(如月くんは、引き上げられる人じゃない)




