表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

EP1  幼馴染の裏の顔

幼馴染、、、いいですよね、私も中高同じ人がいて片思いしていた記憶があります。青春って尊い。

如月蓮は、ずっと走り続けてきた。


 それはサッカーのピッチの上だけじゃない。勉強机に向かう夜も、誰もいない校舎の廊下を歩く朝も、すべては一ノ瀬紬の背中を追うためだった。


 幼馴染の紬は、最初から特別だった。

 整った顔立ち、誰にでも分け隔てなく接する性格、テストでは常に学年一位。運動神経も抜群で、教師からも生徒からも一目置かれている存在。


 ――隣に立つなら、同じ高さにいなきゃいけない。


 その一心で、蓮は努力を重ねた。サッカー部では副キャプテンに選ばれ、学年成績は二位。周囲から見れば十分すぎる成果だ。それでも、紬を見るたびに胸の奥が少しだけ痛んだ。


 あと一歩。いつか、その一歩が届くと信じていた。


 あの日までは。


放課後、友達との罰ゲームで買い出しに行こうとしたとき、校舎裏で足を止めた。

聞き慣れた声が、聞こえてきたからだ。


「正直さ、如月くんって必死すぎない?」


 紬の声だった。


 心臓が、嫌な音を立てる。


「分かる。副キャプテンとはいえ、俺の影に隠れてる感じだしな」


答えたのは、サッカー部キャプテンの王堂司。

 軽い笑い声が重なった。


「私に並ぼうとしてるのが見え見えで、ちょっと痛いんだよね」


視界が、にじんだ。


 言い返す言葉も、飛び出す勇気もなかった。

 努力が、否定された気がした。存在ごと、切り捨てられたような気がした。


――もう、何も信じなければいい。


 そう思った瞬間、胸の奥がすっと冷えていくのを蓮は感じた。

 校舎裏から立ち去ろうと、足を踏み出した、その時。


「ちょっと待って」


 落ち着いた声が、背中にかかった。


 振り返ると、そこにいたのは一人の女子生徒。

 同じ制服だが、着こなしがどこか余裕を感じさせる。夕焼けを映す蒼い瞳が、まっすぐ蓮を見ていた。


「あの……今の、聞こえちゃった」


 申し訳なさそうに眉を下げるが、声は穏やかだった。


「でも、噂話するためじゃないから。安心して」


 蓮は一瞬、言葉を失い、視線を逸らす。


「……だったら、放っておいてください」


「うん。そう言われると思った」


 彼女は苦笑しながら、校舎の壁にもたれかかった。


「でもね、後輩があんな顔してたら、先輩としては無視できないでしょ」


 “先輩”という言葉に、蓮は思わず顔を上げる。


「……先輩?」


「そう。三年生。名前は――今はまだ内緒でいい?」


 冗談めかした言い方に、張り詰めていた空気が少し緩んだ。


「如月くん、で合ってるよね」


 名前を呼ばれ、驚く。


「サッカー部の副キャプテン。学年成績二位。努力家で有名」


「……なんで、そんな」


「先輩って、案外いろいろ見てるの」


 彼女は軽く肩をすくめる。


「で、さっきの話」


 少し真面目な表情になり、蒼い瞳が細められる。


「あれを真に受けて、自分まで否定する必要はないよ」


 蓮は唇を噛みしめた。


「でも……無駄だったみたいで」


「無駄じゃない」


 はっきりとした声だった。


「誰かに追いつこうとして頑張れる人はね、それだけでちゃんと強い」


 彼女は一歩近づき、声を落とす。


「それに、比べられる場所まで来たってことは……もう十分すごいんだから」


 夕焼けが二人の影を長く伸ばす。


「悔しいなら、悔しがっていい。先輩はそういうの、見逃さない主義だから」


 少し照れたように笑う先輩に、蓮の胸が不思議と軽くなる。


「今日は、もう帰りな」


「……はい」


「また落ち込んだら、ここに来なさい」


 彼女は校舎裏を指さした。


「先輩が話を聞いてあげる」


 そう言って手を振り、夕暮れの向こうへ歩いていく。


 名前を聞きそびれたことに気づいた時には、もう遅かった。


 それでも蓮は、胸の奥に残る温かさを確かめるように、拳を握った。


 ――同じ空の下に、

 もう一人、味方がいる。








よかったらブックマークお願いします、Xで投稿する日をツイートしているのでぜひ見てみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ