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目を開けると、電車の中にいた。
いつもの帰り道。
いつの間にか、眠っていたようだ。
電車は停車していた。
降りる駅だ。
ベルが鳴る。
慌てて立ち上がると、膝の上から本が落ちた。
読もうとしていた本だ。
急いで拾って、電車を降りた。
後ろでドアが閉まり、電車はゆっくりと走り出した。
見慣れた駅。
通い慣れたホーム。
思わず、ホッと胸を撫で下ろした。
同時に、どっと疲れが押し寄せてきた。
妙に、体がだるい。
週末だからだろうか。
今週は忙しかったし……。
そう思いながらも、何故か違和感を覚える。
頭の中にもやがかかっているような――そんな感じだ。
ズキッ――。
手首に痛みを感じた。
見ると、擦り切れて血が滲んでいる。
いつ怪我したんだろう……。
考えても、思い当たることはない。
とにかく、今日は疲れた。
早く寝よう。
駅を出て、コンビニへ向かった。
陳列棚にあった牛丼に手を伸ばす。
あと、酒と……。
店内を回りながら商品をカゴへ入れていく。
レジの前に立った時――かごの中身を見てギョッとした。
牛丼が四個に、ビールが二本と日本酒が一本。
オレンジジュースに、お菓子、棒付きのキャンディーまで。
何で四個?
俺、そんな大食いじゃないし……日本酒なんて飲まない。
しかもオレンジジュースって……。
お菓子も、こんなにたくさん。
棒付きのキャンディーなんて、子どもの時以来口にしていない。
慌てて棚に戻す。
けれど……牛丼を棚に戻す時、名残惜しさが胸をよぎった。
牛丼を一個と、ビールを二本だけで会計を済ませた。
何やってんだ俺……。
コンビニを出て、夜道を歩く。
誰かと大切な約束をした気がする。
けれど、それが誰なのか、何を約束したのか全く思い出せない。
ふと――空を見上げた。
満月が、静かに輝いていた。
優しい風が頬を撫でる。
にぎやかな声が聞こえた気がした。
完。




