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櫻華の桜  作者: shio
第八章 二十三夜
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「この部屋にどなたかをお招きするのも久しぶり――あ、今、私に友がいないと考えたでしょう?」


 顕華は「ふふ」と可憐に微笑む。その姿は竜女という特別なものではなく、歳相応の愛らしい少女にしか見えない。


「友はいます。沙羅さら迦稜かりょう。もう久しく会っていませんが……どうぞ、櫻華様」


 準備を整え、顕華は席へと導いた。櫻華も頷き、導かれるまま席に座る。


「リン、ありがとう。もう下がって大丈夫ですよ」

「ですが、顕華様……」

「心配は無用です。櫻華様と二人でお話したいのです」

「……はい」


 不満がありつつもリンは返事をし、一度だけ櫻華に視線を向けてからすっと部屋を出て行った。そんなリンの態度に「申し訳ありません、櫻華様」と少しだけ困ったように笑ってから、顕華は櫻華の正面へと座り話を続けた。


「沙羅は阿修羅様の娘で、迦稜は迦楼羅様の妹君になります。阿修羅様も迦楼羅様も八部衆ではまだお若いのですが、お二人とも美しく凛とした女性で……そうですね、櫻華様と似ています」


 そこでまだ、顕華はくすりと笑い、


「ですが、若いといっても人の時と私達の時では流れる時間が違い、人の時でいえば高齢になるのかもしれませんが。ああ、でも、そう考えれば、私も人の歳では櫻華様のお姉様になってしまいますね」


 楽しそうに戯れて話すその姿に、顕華の心に触れ、櫻華もまた――にこと微笑んだ。

 その桜のつぼみのような小さな微笑みに、


「――やっと笑ってくださいましたね」


 顕華は一瞬見惚れ、また涙がでそうにもなり、そして、心から微笑み返した。


「櫻華様」


 名を呼ぶ。真っ直ぐ見つめ、自分の気持ちが伝わるようにと精一杯の想いを込めて、顕華は言の葉を紡いだ。


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