七
「この部屋にどなたかをお招きするのも久しぶり――あ、今、私に友がいないと考えたでしょう?」
顕華は「ふふ」と可憐に微笑む。その姿は竜女という特別なものではなく、歳相応の愛らしい少女にしか見えない。
「友はいます。沙羅と迦稜。もう久しく会っていませんが……どうぞ、櫻華様」
準備を整え、顕華は席へと導いた。櫻華も頷き、導かれるまま席に座る。
「リン、ありがとう。もう下がって大丈夫ですよ」
「ですが、顕華様……」
「心配は無用です。櫻華様と二人でお話したいのです」
「……はい」
不満がありつつもリンは返事をし、一度だけ櫻華に視線を向けてからすっと部屋を出て行った。そんなリンの態度に「申し訳ありません、櫻華様」と少しだけ困ったように笑ってから、顕華は櫻華の正面へと座り話を続けた。
「沙羅は阿修羅様の娘で、迦稜は迦楼羅様の妹君になります。阿修羅様も迦楼羅様も八部衆ではまだお若いのですが、お二人とも美しく凛とした女性で……そうですね、櫻華様と似ています」
そこでまだ、顕華はくすりと笑い、
「ですが、若いといっても人の時と私達の時では流れる時間が違い、人の時でいえば高齢になるのかもしれませんが。ああ、でも、そう考えれば、私も人の歳では櫻華様のお姉様になってしまいますね」
楽しそうに戯れて話すその姿に、顕華の心に触れ、櫻華もまた――にこと微笑んだ。
その桜のつぼみのような小さな微笑みに、
「――やっと笑ってくださいましたね」
顕華は一瞬見惚れ、また涙がでそうにもなり、そして、心から微笑み返した。
「櫻華様」
名を呼ぶ。真っ直ぐ見つめ、自分の気持ちが伝わるようにと精一杯の想いを込めて、顕華は言の葉を紡いだ。




