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櫻華の桜  作者: shio
第七章 血化粧
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「おかえりなさい――ああ」


 神無は胸の前でぽんっと手を叩き、楽しそうに問いかける。


「殺したのですね、神楽」

「ああ、殺した」

「どうでしたか?」

「面白くはあった。が、興には欠ける。血はいいが、血にも高低があるものだ、と考えていた。『華』がなければ艶がない」


 そう答え、そして、


(――あやつ、櫻華のほうが面白かった)


 それだけは内で呟き、神楽もにこと微笑む。


「まあ、幼子の戯れ程度には楽しくはあった」

「そうですか。よかったですね」


 神楽の言葉に頷き、神無は何事もなかったように『世間話』を終わらせた。


「……殺した……?」


 だが、神威だけは世間話で終わらせることはできない。震える声で呟き、そして、神楽に瞳を向けた。


「神楽、誰を……」

「誰を?」


 神楽は笑う。我が姉ながら何を言っているのか。


「父上と母上。あとは、その周りにいる者も殺した」

「っ」

「まったく、我が親ながらあの『程度』だとは思わなかった。周りに居た者もしかり。同族でも、遊びの相手にもならぬとは」

「……神楽……神楽っ、あなたはっ!」


 一歩踏み出し……だけれど、神楽の視線に神威は足を止めさせられ、だが言葉は止まらず怒りと悲しみに神威は声を震わせた。


「父、母を……親を殺したというのですか!」

「親、ともいえぬだろう姉上。わかっておろう」


 今更なことだった。わかりきっていることを何故問いかけ、姉はこんなにも戸惑っているのか。


「父の子かも、母の子かも分からぬ。それどころか、知らぬところでどれだけ兄弟がいるか。我らとて、本当の姉妹かどうか」

「っ……!」

「安心していい。わしは姉上たちを気に入っている」


 神楽は微笑んで伝え、そして、再び歩き出した。


「――ああ、そうだ神無姉上」

「なんですか?」

「後は頼む」

「はい、わかっていますよ」


 神無も微笑み答え、そのまま神楽を見送った。


「さて、綺麗にせねばなりませんね。人を呼びましょう」


 神楽が去った後、紅に染まった廊下に視線を落とし神無は優しい言葉を紡ぐ。


(姉上……神楽……)


 神威は感情乱れたまま、言葉なく二人を見るしかできない。


「ああ、そうだ、神威」

「……はい、姉上」

「奥の間を綺麗にした後、主な者に集まるよう伝えてください」


 神無はそういって微笑む。


「私が、緊那羅を継ぎます。仕様がありませんね、父も母もいないのですから」


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