七
「人間を皆殺しにするかどうか」
「――――」
その言葉に、顕華は息を止めて櫻華を見つめた。
迷いのない答えと、凛とした語調。切っ先を突きつけられているような真っ直ぐさに思わず内を震わす。
(ああ、この方は――)
――この言葉を言える方なのだ。涙がでそうな心とともに、自身でも驚くほど魅かれている。
散華の少女――純粋に真っ直ぐに穢れなく黒耀の瞳を向ける妙月櫻華に。
「――櫻華様」
ようやくにしてでた言葉。それは、顕華の内から自然にでた言霊だった。
「我が家へ来ていただけませんか」
「……顕華様」
その言葉に隣に控えていたリンが不安の声を上げた。その意を分かっているように、安心させるように一度だけリンへと視線を向け、そして、顕華は続けた。
「私も貴女と関わる意は分かっています。周りがどう捉えるのかも。ですが――それも含め、そして、それを外して、私は櫻華様と友人になりたいと思いました」
ふわりと微笑む。それは、この僅かの対話で見せていた微笑ではなく、本当に心を許した微笑み。
「好きになってしまいました」
その曇りのない、まさに華を顕すような顕華の微笑みに櫻華は黙って応じた。
迷いがある。縁を持つのは――逃げだと分かっていても好きではなかった。
(桜が見たい)
自然と内で呟いた。心が重くなる時、いつも思うのはそのことだった。
桜は何も言わない。が、いつも何かを与えてくれる。散る花弁が見たかった。満開の桜と、舞う桜を。
(――覚悟を)
心で描き、スッと息を吸う。自分は散る桜で在ることを、刀で在ることを、その覚悟を決める。自分は自分でしかなく、一人の人間でしかない。八部衆と人間とのことの中心になるつもりもなく、勘違いすることもない。そう自戒する。
「分かりました。御一緒します」
「有難うございます」
櫻華の言葉に、顕華は嬉しそうにニコと笑った。




