四
「お会いできて嬉しいです。どうぞ、おかけください」
勧められるままに、櫻華は顕華の前へと座った。こういう場に慣れているのか、顕華の所作は清々しく嫌味が全くない。涼風が流れるようなその雰囲気に普通ならば誰もが心安らぎ、顕華の愛らしい姿に自然と微笑むに違いない――だけれど、櫻華には顕華が何者であるかは会う前から、応接室に近づくにつれて感じた気配から察していた。
「どうぞ」
あらかじめ用意されていたものだろう。テーブルにあるお茶を顕華はスッと櫻華へと向けた。それを手に取り、櫻華は唇を触れさせた。顕華もまた茶碗を手にする。
互いに一口。その後、コトッと静かに置いてから、顕華は櫻華を改めて見つめた。
「ここには、私達三人しかおりません。学院長にお願いしてそうしていただきました。突然のお呼び立てに不信に思うかも知れませんが、どうぞお気を楽に、妙月様」
「ありがとうございます」
礼を返しながら、櫻華もまた顕華を見つめた。幼いながらもその話し方、細やかな心づかいは大人のもの。それもそのはず、顕華が名乗った瀧という家名。知らぬ者はいない八大名家が一つ瀧家。名家の者であるならば、その纏うものも所作も成程当然とも思う。とはいえ、同じ名家でも神楽はそれとは全く違ったが。
もしかしたら、と櫻華はふと思った。神楽にも同じような感覚があったのだが、もしかしたら見た目そのままの年齢ではないのかもしれない。幼く見えても、その実は自分よりも人生の長者かもしれない……そう、『人とは異なる者ならば』。
こちらの視線を顕華はどう捉えたか。そしてまた、自分の視線を櫻華がどう捉えられているか――顕華はにこりと微笑むと柔らかく話を始めた。
「こちらには識家の方が来られているとか。しかも、妙月さんと親しくされていると聞きました――失礼をお許しください」
優しい視線と柔らかい口調なれど、その内には深々とした強さがある。そのことが、櫻華と接して感じた顕華の答えだった。遠まわしな口調や探るような言葉は不要と出会った一瞬で判断したのだろう。そして、そのことが顕華という幼い少女の宿しているものをよく現していた。
「どこまでお話を聞かれていますか?」
あくまでも穢れなく真っ直ぐに――顕華は澄んだ瞳と真っ白な言葉でそのままを櫻華に伝える。
そのことに――櫻華は少しだけ内で息をついた。悪感情を持っているわけではない。顕華の態度は清々しく、好意を抱くものだ。だけれど、この話については、いや、自分に会いに来たことについては迷惑なのには変わりはなかった。




