十一
「もう分かっているとは思うが、散華はわしらにも通用する。だが」
――ダンッ！！
再び踏み込み、神楽は左拳を打ち込んできた。それを右に流し、続けて来る右拳を左手で捌く。
「魔の武者とは違うことも、もう分かっているだろう。殺す気で来なければ、術を施すことはできんぞ」
自分の右へと回った櫻華に向かい、ダンッという激しい踏み込みとともに神楽は肘を打ち込んだ。動きの流れのまま、右足を引き身体を逸らせることで肘を捌く櫻華に、神楽はなお身体を密着させ、首を狙い右腕を振りぬく。
迫る裏拳を紙一重でかわし、続けて来る左の打ち込みを櫻華は右手で流した。受ければ腕が吹き飛びそうなほどの風圧を轟かせながら、目の前を重く速く過ぎていく拳。だが、それでも櫻華は臆してはいなかった。臆せば動きが鈍り、感じたとおりに自分の腕が吹き飛ぶことになるだろう。
鋭く息を吸いわずかに腰を落とすと、櫻華は近接している神楽と向き合った。退くことはせず足を止め、息がかかるほどの至近距離で神楽を迎え撃つ。
（――面白い）
退かずに向かう、お前ならそうするだろう――櫻華の反応に神楽は笑みを浮かべた。そして、勢いそのままに神楽は櫻華の足へと自分の足を密着させ貫手で首を狙う。
右手で弾くことなく流れを殺さず僅かに逸らし、櫻華は身体を回転させ神楽の胸へと左の掌底を放つ。しかし、身体に届く前に神楽は横から肘を叩き、櫻華の掌底を内へと逸らした。
崩れそうになる身体を櫻華は右足を退くことで保ち、左の引く手と共に神楽の右腕を押さえ次手を防ぐ。しかし、神楽は僅かな振りで簡単に手を弾くと服を掴もうと右腕を振りぬいた。迫る手に櫻華は身体の軸を変え、左足を円を描くように後ろへ滑らせ間合いを空けた。が、離れた足を逃がさぬようにくるぶしをぶつけ、神楽は身体を滑らせ重心を前に寄せ重い掌底を放つ。
速く重い神楽の打ち込み――腕だけでは防ぎきれない。櫻華の身体は瞬時に動いていた。掌底を放たれると同時、櫻華は腕だけで捌こうとせず、触れた神楽の足をずらし体重を逸らせ勢いを阻む。僅かに鈍った神楽の打ち込みを櫻華は右手で弾き、そして、出来た一瞬の間に神楽の懐に潜り込むように腰を落とし、踏み込みと同時に全体重を乗せた体当てを打ち込んだ――が、
