表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
櫻華の桜  作者: shio
第五章 櫻華の桜
64/138


(果たして――)


 散華は魔に抗する強力な術であり、尊ぶべきものであり、喜ぶべきもの――妙月櫻華は望まれる存在、誰もが望んだ存在。それは、真実のはず――真実でなければならない。

『しかし』


(一体、誰が……)


 誰が喜び、望んでいるのか。事実、散華を使える者など誰も望んでいないのだ。防人も、学院も――皮肉だが、魔も。

 誰もが望んでいない、誰も触れたくない人間。居て欲しくない人間、居なかったほうがよかった人間――存在をなかったものとしたい人間。


「…………」


 壁に寄りかかり、巴は頭を窓に乗せた。

 じゃあ、何故自分は探しているのか――礼を言いたいのか、謝りたいのか、それともただ話したいだけなのか、接したいだけなのか。

 それとも……まだ『自分のほうが正しい』ことを示したいのか。正しいことを示し、自分が自分で在ることを保ちたいのか。


(……正しいってなに?)


 呟く。こんな考えが浮かぶこと事態分けがわからないことだった。もし、櫻華や神楽へ向かってそれをしたとして、一体何になるというのだ。

 壁に寄りかかったまま、なお身体が落ちる。このまま座り込みたい衝動にかられる……が、それはなんとかとどまった。

 会わなくてはならない。櫻華と神楽に。それが学生会長としての立場だからでもなんでも良かった。どういう理由でもいい。とにかく会わなければならない。

 身体を起こし、顔を上げる。すると、視界の隅で一片の花弁が舞った。


(――桜)


 はっと気付き、窓の外を見つめる。

 蒼天の空に桜が舞い、陽の光に煌き瞬いていた。それを見て、巴は歩き出す。

 桜の舞う空がある場所――屋上へと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ